
「新規開拓を続けているのに、以前と同じ営業先へ連絡するだけになっている」「景気のニュースを見ても、自社がどこへ営業すべきか分からない」。そんな悩みを抱えていませんか。
2026年9月30日に公表された第185回中小企業景況調査では、2026年7〜9月期の製造業の業況判断DIが、前期から6.3ポイント改善しました。
ただし、DIは売上や受注額の増加率ではありません。製造業全体の値もまだマイナスで、「製造業ならどこでも仕事が増えている」とは言い切れない状況です。
一方、機械器具や金属製品など、一部の業種ではDIがプラスへ転じています。こうした変化は、自社の技術と相性のよい営業先を探し直す手がかりになります。
本記事では、DIの読み方、製造業の業種・地域別の動き、加工・設備需要を見極める視点、営業リストの見直し手順を解説します。
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1.中小企業景況調査とDIの読み方
1-1.中小企業景況調査とは
中小企業景況調査は、中小企業庁と中小機構が、全国の中小企業の景気動向を把握するために四半期ごとに実施する調査です。業況、売上、採算、資金繰り、人員や設備の過不足などを確認できます。
第185回の調査時点は2026年9月1日で、調査対象18,829社に対し、有効回答は17,902社でした。この回答数は製造業だけではなく、建設業・卸売業・小売業・サービス業などを含む全産業の合計です。
1-2.DIの値と改善幅の違い
DI(ディフュージョン・インデックス)は、回答企業の判断の広がりを示す指標です。本記事で扱う業況判断DIは、前年同期と比べて「好転した」と回答した企業の割合から、「悪化した」と回答した企業の割合を差し引いて算出します。
たとえば「好転」が20%、「悪化」が30%なら、DIは−10です。マイナスは、悪化と回答した企業の割合が好転と回答した企業の割合を上回っていることを意味します。
今回の製造業は、4〜6月期の−16.6から7〜9月期の−10.3へ変化しました。差は+6.3ポイントですが、これは「前年同期比で判断したDI」を前期のDIと比べた変化です。受注額が前期比6.3%増えた、という意味ではありません。
また、業況や採算では値の上昇が改善を表しますが、人員・設備の過不足DIは「過剰」の割合から「不足」の割合を引くため、マイナス幅が広がるほど不足感が強まります。指標ごとの定義をそろえて読むことが大切です。
2.2026年7〜9月期の製造業の景況動向

2-1.業況・採算と人手不足の動き
製造業の業況判断DIは−10.3、採算(経常利益)DIは−15.2となり、ともに前期からマイナス幅が縮小しました。改善が見られる一方、前年同期と比べて悪化したと答える企業がなお多い状態です。

出典:第185回中小企業景況調査報告書(業況判断・採算、前年同期比)をもとに作成。
人員・設備については別の動きが見られます。製造業の従業員数過不足DI(今期の水準)は−19.3から−21.7へ、生産設備過不足DI(今期の水準)は−5.9から−6.0へ低下しました。人員の不足感は強まり、設備の不足感もわずかに強まっています。
営業では「景況が改善しているか」に加え、「仕事に対応する人員や設備が足りているか」を見ると、提案の方向を考えやすくなります。ただし、この統計だけで外注や設備購入の予定を確認することはできません。
2-2.業種別の業況判断DI
製造業14業種ではすべての業種で業況判断DIが上昇し、次の4業種ではマイナスからプラスへ転じました。

出典:第185回中小企業景況調査報告書(業種別業況判断、前年同期比)をもとに作成。14業種のうち、プラスへ転じた4業種を抜粋。
これらは切削、板金、溶接、治具製作などとの接点を検討しやすい業種です。ただし「機械器具」の中にもさまざまな製品・用途があり、業種名だけでは自社との相性は分かりません。製品、部品、工程まで絞る必要があります。
報告書には、長崎の金属製品企業が、半導体製造装置向け部品の仕事は忙しい一方、熟練技能者の不足で生産能力を上げにくいと回答した例があります。これは一社の状況ですが、需要と供給能力の両面を確認する重要性を示しています。
2-3.地域別データの確認方法
全国の製造業DIが改善していても、地域別では動きが異なります。全国報告書の「業況判断DI(地域別)」から、製造業の値を抜粋すると次のとおりです。
| 地域 | 2026年4〜6月期 | 2026年7〜9月期 | 前期差 |
| 関東 | −13.2 | −4.0 | +9.2ポイント |
| 中部 | −16.9 | −7.1 | +9.8ポイント |
| 近畿 | −17.6 | −9.9 | +7.7ポイント |
| 四国 | −19.4 | −23.1 | −3.7ポイント |
出典:第185回中小企業景況調査報告書14ページ。製造業の前年同期比DI。8地域のうち4地域を抜粋。
全産業の地域別DIを、そのまま製造業の動きとして扱わないよう注意しましょう。また、全国の業種別データと地域の製造業データを組み合わせても、「中部の機械器具企業がすべて好調」とまでは分かりません。
地域データは、輸送費、訪問しやすさ、納品体制などと合わせて調査対象を絞る材料にします。DIが低い地域でも、好調な個別企業や自社に合う案件はあり得るため、数値だけで営業対象から外す必要はありません。
3.景況データから考える加工・設備需要

3-1.企業の課題と自社技術を結び付ける
景況データを確認した後は、「その業界の企業が、何に困っている可能性があるか」を考えます。以下は調査結果を手がかりにした営業上の仮説であり、統計が示す確定需要ではありません。
| 個別企業で確認する変化 | 想定する課題 | 提案例 |
| 増産・受注増と人員不足が重なる | 既存体制では納期に対応しにくい | 切削・板金・溶接の一部工程の外注、繁忙時の補完 |
| 設備導入・ライン更新が進む | 導入・立ち上げに周辺部品が必要 | 治具、架台、カバー、取付部品の製作 |
| 新製品・新用途へ展開する | 試作や小ロット対応の負担が増える | 試作加工、材質変更への対応、検証用治具 |
| 原価・採算の改善を進める | 調達費用や工程のムダを減らしたい | 加工方法の見直し、工程集約、歩留まり改善 |
たとえば、短納期の切削加工が得意なら、機械器具業種の中から、自社の対応材質・寸法・ロットと合う装置メーカーや部品メーカーを探します。その企業の増産情報や採用情報を確認し、購買・生産部門に外注工程の有無を聞く、という順序です。
同じ人手不足でも、検査工程が詰まっている企業に加工能力だけを訴求しても課題は解決しません。「どの工程に負担があるか」「自社が引き受けられる範囲はどこか」を確認すると、提案が具体的になります。
3-2.増産と外注・設備投資を区別する
受注が増えていても、内製を優先する企業や、新規サプライヤーを受け入れない企業もあります。人手不足があっても、資金や設置スペースの制約で設備投資を見送る場合があります。
そのため、企業のニュースや採用情報は「接触する理由」にはなりますが、それだけで案件があると判断しないことが大切です。初回接触では、次の点を確認しましょう。
- 生産量や案件数に変化があるか。増えている製品・用途は何か。
- 負担が集中している工程は、加工・組立・検査のどこか。
- 外注化や新たな協力会社の検討余地があるか。
- 必要な材質・精度・寸法・ロット・納期・品質条件は何か。
- 検討時期と、見積・試作・取引審査などの次の手順は何か。
「景気が良さそうなのでご連絡しました」よりも、「小ロットのステンレス切削に対応できます。繁忙時に外注先を探す工程はありますか」のように、自社が対応できる内容から確認すると話を進めやすくなります。
4.営業リストの優先順位を見直す手順

4-1.業種・地域から個別企業へ絞る
まず、営業先を探す条件を「業種」だけでなく、製品・用途、材質、寸法、精度、ロット、納品地域まで整理します。景況DIで気になる業種・地域を見つけたら、その条件と合う企業を抽出します。
次に、各社の公式サイト、製品情報、ニュースリリース、採用情報などを確認し、「自社技術との接点」「確認できた変化」「問い合わせる課題」を一つずつ記録します。増産や工場新設の発表は、発表日だけでなく稼働予定や対象製品も確認しましょう。
たとえば、リストの項目は次のようにすると、調査結果を営業行動へつなげやすくなります。
| 項目 | 記入例(架空例) |
| 対象企業・製品 | A社/産業用装置 |
| 自社技術との接点 | ステンレス製の小物部品/小ロット切削 |
| 確認できた変化 | 新製品の発表/公式発表のURLと確認日 |
| 需要の仮説 | 試作・立ち上げ部品の外注余地を確認 |
| 接触する部門 | 購買・調達、開発部門 |
| 次の行動 | 対応条件を整理した資料を用意し、今週中に連絡 |
4-2.適合度と検討時期で優先順位を決める
優先順位は、DIが高いかどうかだけで決めず、自社との適合度と個別企業の検討状況で判断します。
- 優先A:自社の対応条件に合い、必要工程や検討時期を確認できた企業。見積・試作・商談などの次の行動を決める。
- 優先B:技術との接点があり、増産・新製品などの変化を確認できた企業。需要や取引条件の確認を優先する。
- 継続確認:技術の接点はあるが、需要や時期が不明な企業。情報更新や再連絡の時期を設定する。
接触後は「案件なし」だけで終わらせず、内製方針、条件不一致、時期が先、別部門が担当、といった理由を記録します。反応を見ながら製品・用途や提案内容を修正し、次の候補企業へ反映します。
四半期ごとの調査公表を営業リストの見直しのきっかけにし、個別企業の情報は接触前に更新する。この運用なら、以前作ったリストを同じ順序で使い続ける状態から抜け出しやすくなります。
まとめ
2026年7〜9月期の製造業は、業況判断DIと採算DIが改善し、一部の業種では業況判断DIがプラスへ転じました。一方、製造業全体ではマイナスが続き、人員・設備の不足感も残っています。
営業で活用する際は、景況データで業種・地域を絞り、企業情報で変化を確認し、接触によって課題と発注条件を確かめることが重要です。
統計を受注の保証として見るのではなく、営業先と提案を見直す判断材料として使いましょう。
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景況データで気になる業界が見つかっても、実際に自社の加工・製品を必要とする企業を探し、アプローチするには調査と営業の工数がかかります。
- 機械・装置メーカーの中で、自社の技術に合う営業先が分からない。
- 材質・精度・ロットまで調べて候補企業を絞る時間がない。
- 増産や新製品の情報を見つけても、どの部門へ連絡すべきか迷う。
- 通常業務が忙しく、新規開拓や継続的なフォローが止まりやすい。
Eigyo Engineは、製造業の新規取引先開拓を支援するサービスです。自社の得意技術や対応条件を整理し、営業戦略の設計、企業リサーチ・リスト作成、アプローチ、商談設定までを支援します。

たとえば、次のような営業先を、自社の対応条件との接点から検討できます。
- 切削加工:装置の機構部品などを扱う機械・部品メーカー。
- 板金・溶接・製缶:筐体、カバー、架台などが必要な装置メーカー。
- 治具製作:加工・組立・検査工程を持つ製品メーカーや部品メーカー。
特定業界や企業からの案件獲得を保証するものではありません。自社の強みと接点のある具体的な営業先を探し、継続的に新規開拓を進める手段としてご活用できます。
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