
防衛・宇宙産業と聞くと、「大手重工メーカーや専門企業だけが関わる市場」という印象を持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし、防衛装備品や人工衛星、ロケットなどは、1社ですべてを製造できるものではありません。機体や装置を構成する多数の部品を、素材メーカー、部品メーカー、加工会社、表面処理会社、検査会社などが分担して製造しています。
防衛産業のサプライチェーンは特に広く、戦闘機関連では約1,100社、戦車関連では約1,300社、護衛艦関連では約8,300社が関わるともいわれています。そこには大企業だけでなく、数多くの中堅・中小企業が含まれています。
現在は、防衛予算の拡大や宇宙産業への投資を背景に、既存のサプライヤーだけでは対応しきれない案件も生まれています。その結果、これまで防衛・宇宙分野との取引がなかった加工会社にも、「この部品を加工できないか」「新しい調達先になれないか」といった引き合いが広がり始めています。
| 装備品 | 関連企業数 |
| 戦闘機関連 | 約1,100社 |
| 戦車関連 | 約1,300社 |
| 護衛艦関連 | 約8,300社 |
出典:経済産業省・防衛装備庁「防衛産業における受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
ただし、これは「防衛・宇宙産業なら簡単に受注できる」という意味ではありません。
本記事では、
- なぜ今、防衛・宇宙産業で加工会社への需要が高まっているのか
- どのような加工や技術が求められているのか
- 発注先として選ばれるために何を準備すべきか
- どのように取引先との接点をつくるのか
を分かりやすく解説します。
index
防衛・宇宙産業で今、何が変わっているのか
防衛需要の拡大と生産能力の不足
政府は、防衛力の抜本的な強化を進めています。
2026年度の防衛力整備計画対象経費は、歳出ベースで8兆8,093億円です。防衛省は、事業の進捗状況などを踏まえ、予算額を着実に増額していると説明しています。

出典:防衛省「防衛力抜本的強化の進捗と予算 令和8年度予算の概要」
防衛関連の調達が拡大すれば、完成品を製造する大手メーカーだけでなく、その下で部品や加工工程を担うサプライヤーにも仕事が波及します。一方、既存の防衛関連企業では、人手不足や設備能力の制約、発注量の増減への対応が課題となっています。経済産業省と防衛装備庁がまとめた資料でも、防衛費の増額を背景に発注の問い合わせが来ているものの、仕事量のピークに合わせた人材確保が難しいという事業者の声が紹介されています。つまり、発注が増えても、既存のサプライヤーだけですべてを受けきれるとは限りません。その不足を補うために、これまで防衛分野との取引がなかった加工会社が、新たなサプライヤー候補として検討される機会が生まれていると考えられます。
宇宙産業も官民を挙げて市場を拡大
宇宙産業でも、政府と民間企業による投資が進んでいます。
政府は、2020年に4兆円だった国内の宇宙関連市場を、2030年代の早期に8兆円へ拡大する目標を掲げています。対象は人工衛星やロケットなどの宇宙機器だけでなく、衛星通信、位置情報、気象・災害監視、衛星データを活用したサービスなども含まれます。また、JAXAには宇宙戦略基金が設置され、総額1兆円規模の基金を通じて、民間企業、スタートアップ、大学などによる技術開発を支援しています。技術開発期間は最大10年で、宇宙輸送、衛星、探査などの分野が対象です。

出典:JAXA宇宙戦略基金「宇宙戦略基金の基本方針及び実施方針」
開発される衛星やロケット、関連装置が増えれば、構造部品、機構部品、筐体、治具、試験装置などの需要も生まれます。宇宙産業でも、部品製造や加工工程を担えるサプライヤーの確保が重要になっているのです。
共通するのはサプライチェーンの裾野拡大
防衛産業と宇宙産業は、制度や調達方法が異なる別々の市場です。
一方で、次のような共通点があります。
- 製品を構成する部品数が多い
- 多くの企業や工程が関わる
- 少量・多品種の案件が多い
- 高い品質と信頼性が求められる
- 特殊な材料や加工方法を使用することがある
- 開発から運用までの期間が長い
- 1社だけでは製造工程を完結できない
防衛産業では、防衛省と直接契約するプライムコントラクターだけでなく、部品製造や加工を担うサブコントラクターを含め、サプライチェーン全体で生産・技術基盤を強化する必要性が示されています。航空宇宙分野でも、経済産業省は、大手企業を支えるサプライヤー群への支援や、発注企業と中小企業をつなぐビジネスマッチングを実施しています。防衛・宇宙産業への参入とは、必ずしも国や大手メーカーと直接契約することではありません。
自社が得意とする一つの部品や一つの工程から、サプライチェーンへ参加することも参入の形です。

中小加工会社に来ている「新しい引き合い」の招待

中小加工会社へ届く可能性がある引き合いは、単純な増産案件だけではありません。
主に、次のようなものが考えられます。
| 引き合いの種類 | 背景 | 加工会社に求めること |
| 増産対応 | 既存の取引先だけでは生産能力が足りない | 設備能力、納期対応、生産余力 |
| 代替調達 | 特定企業への依存や供給停止リスクを減らしたい | 同等品を製造できる技術と品質 |
| 試作・開発 | 新しい装備品、衛星、無人機などを開発している | 少量対応、短納期、技術提案 |
| 維持・整備 | 長期間使用する製品の交換部品が必要 | 古い図面への対応、少量再生産 |
| 工程保管 | 社内で対応できない加工や特殊工程がある | 難加工、表面処理、熱処理、検査 |
| 調達先の複線化 | 災害や事業撤退に備えて調達先を増やしたい | 継続供給、安定した品質、事業継続性 |
※防衛産業の取引特性や2026年度航空宇宙産業ビジネスマッチングのニーズをもとに整理。
増産に対応するための生産能力補完
最も分かりやすいのが、既存サプライヤーの生産能力を補うための引き合いです。
発注量が増えても、既存企業がすぐに設備や人員を増やせるとは限りません。そのため、これまで1社に集中していた部品を複数社へ分けたり、一部の加工工程を外部へ委託したりする動きが生まれます。
この場合、必ずしも他社にはない特殊技術だけが求められるわけではありません。
- 図面どおりに加工できる
- 指定された検査を実施できる
- 納期を守れる
- 製造記録を残せる
- 継続して供給できる
といった、基本的なものづくりを安定して続けられることが評価される可能性もあります。
一社依存を避けるための代替調達
防衛・宇宙分野では、部品を供給する企業の廃業や事業撤退、災害、サイバー攻撃、海外からの輸入停止などが、製品全体の生産に影響することがあります。
そのため、特定の会社や国だけに依存せず、代替となる材料、部品、加工先を確保する動きが進んでいます。防衛生産基盤強化法でも、供給網の強靱化、製造工程の効率化、サイバーセキュリティ強化、事業承継などを通じて、装備品を安定的に製造できる基盤づくりが進められています。加工会社にとっては、既存サプライヤーを完全に置き換えるのではなく、第2、第3の調達先として登録されることも、新たな取引の入口になります。
試作・少量多品種の案件
防衛装備品は、一般的な消費財のように、同じ製品を数万個、数十万個と製造するものばかりではありません。
需要が防衛省・自衛隊に限られ、運用目的に応じて多くの種類の装備品が必要となるため、多品種少量生産になりやすいという特徴があります。量産終了後も、維持整備に必要な交換部品が少量発注されることがあります。
量産を前提とした大規模工場よりも、
- 1個、数個から対応できる
- 図面を確認しながら加工方法を検討できる
- 段取り替えへ柔軟に対応できる
- 試作から量産への移行を支援できる
といった中小加工会社の方が適している案件もあります。
長期間使用される製品の交換部品
防衛装備品の中には、30年から40年程度運用されるものもあります。
量産が終了した後も、修理や維持整備に必要な交換部品は継続して必要です。ただし、毎年発注されるとは限らず、数年に一度、少量だけ生産する、いわゆる「お久しぶり生産」になる場合があります。

出典:経済産業省・防衛装備庁のガイドラインをもとに作成
二次・三次サプライヤーとしての参入
防衛・宇宙産業への参入は、防衛省やJAXA、大手メーカーと直接契約することだけではありません。
完成品メーカーの下に一次サプライヤーがあり、その下に二次、三次のサプライヤーが続く場合があります。最初から大手メーカーとの直接取引を目指すのではなく、すでに防衛・宇宙分野へ参入している部品メーカーや装置メーカーの協力会社になる方法もあります。
「防衛・宇宙産業へ参入する」というより、まずは自社の加工技術が必要とされるサプライチェーンに参加すると考えた方が現実的です。
どのような加工・技術が求められているのか

必要とされる加工は、装備品、衛星、ロケット、搭載機器などの種類によって異なります。
2026年度の航空宇宙産業ビジネスマッチングでは、機械加工、板金加工、表面処理、治工具製作、チタン加工、熱処理、大物加工など、加工会社に直接関係する具体的なニーズが公開されました。
2026年度航空宇宙産業ビジネスマッチングで公開された主なニーズ
| 分野 | 公開されたニーズ例 |
| 機械加工 | 航空機構造部品の機械加工 |
| 板金加工 | 航空機構造部品向けの板金加工 |
| 表面処理 | 航空宇宙用軸受部品、航空機構造部品の表面処理 |
| 治工具 | 航空機構造部品用の治工具製作 |
| 難削材 | チタン材の加工・熱処理、マグネシウムの切削 |
| 大物加工 | 1mを超える部品の機械加工 |
| 薄板加工 | 0.5mm以下のアルミ薄板加工 |
| 複合材料 | CFRPの旋盤加工、ロケット筐体用CFRP |
| 衛星関連 | 衛星製造、衛星試験、構造解析・熱解析 |
出典:中小企業基盤整備機構「令和8年度航空宇宙産業ビジネスマッチング公募特集」をもとに作成。https://jgoodtech.smrj.go.jp/pub/ja/lp/aerospace2026/?utm_source=chatgpt.com
精密切削・難削材加工

防衛・宇宙関連の機器では、軽量化、強度、耐熱性、耐摩耗性などの要求に応じて、さまざまな金属材料が使用されます。
そのため、次のような強みを持つ企業には、相談が届く可能性があります。
- 5軸加工
- 複合旋盤加工
- 薄肉・複雑形状加工
- 微細加工
- 高精度な同軸度・真円度への対応
- チタンや耐熱合金などの難削材加工
- 小ロット・試作加工
- 加工から測定までの一貫対応
ただし、「高精度加工ができます」だけでは、発注企業は依頼できるか判断できません。
対応できる材質、サイズ、公差、形状、ロット数、保有設備、測定方法を、具体的に示すことが重要です。
精密板金・溶接

装置の筐体、カバー、架台、ブラケット、構造部品などでは、板金加工や溶接が必要になります。
特に、次のような対応力は強みになります。
- 薄板・厚板の両方に対応できる
- ステンレスやアルミの溶接ができる
- 溶接後のひずみを抑えられる
- 板金、溶接、機械加工を一貫して行える
- 少量の筐体や構造物を製作できる
- 寸法検査や気密検査まで対応できる
部品単体の加工だけでなく、組立や検査までまとめて任せられる会社は、発注側の管理工数を減らせるため、調達先としての提案力を高められます。
表面処理・熱処理・特殊工程

耐食性、耐摩耗性、絶縁性などを持たせるため、メッキ、アルマイト、塗装、熱処理、非破壊検査などが必要になる場合があります。
航空宇宙分野では、後工程の検査だけでは品質を完全に確認しにくい加工を、特殊工程として厳格に管理することがあります。取引先や案件によっては、Nadcapなどの認証取得が求められる場合もあります。ただし、すべての防衛・宇宙案件で同じ認証が必要になるわけではありません。
認証取得には費用と時間がかかるため、先に取得するのではなく、取引候補企業が求める工程や認証条件を確認してから判断することが重要です。
試作・少量多品種への対応

開発案件では、図面が完全に固まっていない段階で相談が来ることもあります。
そのため、単に図面どおり加工するだけでなく、
- 加工しやすい形状への変更提案
- 材料や加工方法の提案
- コストを抑えるための設計変更
- 治具や測定方法の検討
- 試作品の短期間での製作
などに対応できる会社は、開発段階から関係を築きやすくなります。中小加工会社は、経営者や技術者が直接相談に乗り、素早く判断できる点が強みです。
「図面を受け取って加工する会社」ではなく、「製造方法を一緒に考えられる会社」になることで、提案できる案件の幅が広がります。
検査・測定まで含めた一貫対応

防衛・宇宙分野では、完成した部品だけでなく、どのように製造し、どのように検査したのかを確認できることが重要です。
三次元測定機、画像測定機、輪郭形状測定機、表面粗さ測定機などを保有し、検査成績書を発行できる会社は、発注側に安心感を与えられます。社内ですべての検査を行えない場合でも、信頼できる検査会社と連携し、加工から検査までを一括して管理できれば、自社の対応範囲を広げられます。
防衛・宇宙産業で選ばれる加工会社の特徴
防衛・宇宙産業で評価されるのは、加工技術が高い会社だけではありません。
品質、情報、工程、納期を継続的に管理できることが、取引先を選ぶ際の重要な要素になります。
防衛・宇宙産業で求められる対応力
| 対応力 | 確認される内容 |
| 品質管理 | 手順書、検査基準、不適合管理、再発防止 |
| トレーサビリティ | 材料、加工工程、作業者、検査結果の追跡 |
| 情報セキュリティ | 図面・仕様書の保存、閲覧権限、持ち出し管理 |
| 変更管理 | 図面の版管理、変更履歴、旧版の誤使用防止 |
| 継続供給 | 設備保守、人材育成、加工条件・ノウハウの保存 |
| 見積り・契約管理 | 材料費、治具費、保管費、追加対応費の明確化 |
品質管理の仕組みがある
防衛装備品は民生品よりも長期間使用される場合があり、機能や性能への高い要求があります。また、仕様を変更する際には、発注元の承認や初回試験などが必要になる場合があります。
そのため、次のような品質管理が求められます。
- 作業手順が決められている
- 検査基準が明確になっている
- 不適合品を識別・隔離できる
- 測定機器を定期的に校正している
- 不具合の原因を調査できる
- 是正処置と再発防止策を記録できる
- 外注工程の品質を管理できる
品質認証は、管理体制を説明するうえで有効です。ただし、必要な認証は案件によって異なります。まずは、現在の品質管理体制を発注企業へ説明できる状態にすることが重要です。
材料・工程を追跡できる
納品した部品について、次の情報を後から確認できる体制が求められる場合があります。
- 使用した材料と購入先
- 材料証明書
- 加工した設備
- 製造日
- 作業者
- 外注した工程
- 検査結果
- 出荷履歴
このように、製品がどの材料から、どの工程を経て作られたのかを追跡できる仕組みを、トレーサビリティと呼びます。製造記録が紙、Excel、個人フォルダなどに分散している場合は、案件番号や図面番号を基準として、関連する情報をまとめて確認できるようにしておく必要があります。
情報セキュリティに対応できる
衛関連の案件では、図面や仕様書などが「保護すべき情報」に指定される場合があります。
その場合、サイバーセキュリティ対策、情報を取り扱う専用エリアの設置、関係者名簿の提出など、契約に応じた情報保全措置が求められます。すべての案件で同じ水準の対策が必要になるわけではありませんが、最低限、次の点は整理しておきたいところです。
- 図面やデータの保存場所
- 情報へアクセスできる従業員の範囲
- メールや外部記録媒体の管理
- ウイルス対策とソフトウェアの更新
- 退職者や異動者のアカウント管理
- 紙図面の保管・廃棄方法
- 取引先から受領した情報の持ち出しルール
発注側から追加のセキュリティ対策を求められた場合は、必要な対策内容と費用負担を契約前に確認することも重要です。
変更管理ができる
開発途中や長期運用中には、図面、材料、加工方法、検査基準などが変更されることがあります。
変更前と変更後の図面が混在すれば、旧版の図面で加工してしまう可能性があります。
そのため、
- 最新版の図面を識別する
- 変更履歴を記録する
- 変更内容を関係者へ共有する
- 旧版を誤って使用できない状態にする
- 変更前後の製品を識別する
といった版管理が必要です。
加工技術に加えて、変更を確実に管理できる会社は、長期的な取引先として評価されやすくなります。
長期間の供給に対応できる
防衛・宇宙関連の製品は、開発から製造、運用までが長期間にわたる場合があります。
受注時点だけでなく、数年後も同じ品質で製造できることが求められる可能性があります。
そのため、
- 設備の保守
- 人材育成
- 図面や加工条件の保存
- 治具・金型の管理
- 材料や購入品の製造中止への対応
- 事業承継
- 協力会社との関係維持
なども重要です。
熟練者の頭の中にしかない加工条件や検査方法は、マニュアルやデータとして残し、別の担当者でも再現できる状態にしておく必要があります。
現実的な見積りと条件確認ができる
防衛関連の調達では、予算要求のために見積りを提出してから、正式な発注まで半年から1年以上かかる場合があります。サプライチェーンの階層が深くなるほど、さらに長期化する傾向があります。
その間に、材料費、電気料金、労務費などが上昇する可能性があります。また、少量生産では、材料の最低購入数量、治具製作、段取り、検査、書類作成などの費用が、製品単価へ大きく影響します。
新しい市場だからといって無理な安値で受注するのではなく、次の条件を確認することが重要です。
- 見積りの有効期限
- 発注予定数量
- 材料費の変動
- 治具や初回検査の費用
- セキュリティ対応費用
- 金型や治具の保管費
- 仕様変更時の追加費用
- 再見積りの条件
- 支払時期と支払方法
受注できるかだけでなく、継続的に利益を確保できる取引かを判断することが必要です。
参入前に準備しておきたいこと

自社の強みを具体的に整理する
「高品質」「短納期」「難加工に強い」といった表現だけでは、発注企業は自社に依頼できるか判断できません。次の項目を整理し、会社案内やWebサイトへ掲載します。
- 対応できる加工方法
- 得意な材料
- 最大・最小加工サイズ
- 対応可能な公差
- 得意な形状
- 得意なロット数
- 保有設備
- 測定・検査設備
- 表面処理や熱処理の協力会社
- 過去の加工実績
- 品質認証
- 対応できる納期
特に、「材質×形状×精度×サイズ×ロット」を組み合わせて示すと、発注企業が自社との適合性を判断しやすくなります。
現在の管理体制との差を確認する
いきなり大規模な設備投資や認証取得を行うのではなく、まずは自社の現状を確認します。
- 図面の最新版を管理できているか
- 材料証明書を保管しているか
- 検査記録を追跡できるか
- 外注工程を管理できているか
- 不適合への対応手順があるか
- データへのアクセスを制限できるか
- 数年後も同じ加工を再現できるか
- 特定の担当者だけに依存していないか
不足している項目を洗い出し、取引先から求められる条件に合わせて、段階的に管理体制を整備することが大切です。
参入する経路を決める
参入方法は、直接取引だけではありません。
- 防衛装備庁へ技術・製品を提案する
- 大手メーカーへ営業する
- 一次・二次サプライヤーへ営業する
- 地域の航空宇宙産業クラスターへ参加する
- 展示会や商談会へ参加する
- マッチングサービスへ登録する
- 既存取引先から関連企業を紹介してもらう
一般的な加工会社の場合は、まずは既存のサプライヤーから、部品や一部工程を受注する方法が現実的です。小さな案件で品質と納期の実績をつくり、徐々に対応範囲を広げることが、継続取引につながります。
認証取得を目的としない
航空宇宙産業への参入を考えると、品質認証や特殊工程認証の取得を最初に考えがちです。
しかし、認証を取得しただけで受注できるわけではありません。対応したい製品、工程、取引先によって、必要な認証や管理水準は異なります。先に営業や商談を行い、具体的な取引可能性と要求事項を確認してから、認証取得や設備投資を判断する方が現実的です。
受注後に必要になる費用まで確認する
防衛・宇宙関連案件では、通常の加工費以外に、次のような費用が発生する可能性があります。
- 初回製品検査
- 専用治具・測定具
- 試験や認定
- 書類作成
- 情報セキュリティ対策
- 金型や治具の長期保管
- 材料の余剰在庫
- 数年後の再生産
- 製造中止材料への代替対応
- 協力会社の監査・管理
見積り時点で分からないことを曖昧にしたまま受注せず、誰がどの費用を負担するのかを事前に確認することが重要です。

防衛・宇宙産業への参入に活用できる相談窓口・支援制度
防衛・宇宙産業への参入を検討していても、どこへ相談すればよいのか、どの制度が自社に合っているのか分からない企業も少なくありません。
相談先や支援制度は、それぞれ対象や目的が異なります。まずは全体を一覧で確認したうえで、自社の目的に合う窓口や制度を詳しく見ていきましょう。
防衛・宇宙産業への主な相談窓口・支援制度一覧
| 窓口・制度 | 主な対象 | できること | 向いている企業 |
| 防衛装備庁「新規参入相談窓口」 | 防衛産業への参入を検討する企業 | 参入方法の相談、技術・製品の提案 | 防衛分野で生かせる技術や製品がある企業 |
| 防衛産業参入促進展 | 中小企業、スタートアップ | 防衛省・防衛関連企業への展示、商談 | 自社の技術を直接紹介したい企業 |
| 航空宇宙産業ビジネスマッチング | 加工会社、部品メーカーなど | 発注企業が公開したニーズへの提案、商談 | 具体的な加工案件を探している企業 |
| 地域の航空宇宙産業クラスター | 地域の製造業 | 共同受注、商談、認証取得、設備利用などの支援 | 単独での参入に不安がある企業 |
| JAXA宇宙戦略基金 | 企業、スタートアップ、大学など | 技術開発、実証、事業化への支援 | 宇宙関連の技術や製品を開発したい企業 |
| 防衛生産基盤強化法に基づく支援 | 防衛装備品の供給網に関わる企業 | 供給網、製造工程、セキュリティなどの強化 | すでに防衛関連の供給網に関わっている企業 |
※各制度の募集時期、対象、支援内容は変更される場合があるため、利用時には公式情報をご確認ください。
防衛装備庁「新規参入相談窓口」
防衛装備庁では、防衛産業へ新たに参入する企業を対象に、参入の仕組みや技術・製品の提案に関する相談窓口を設けています。
提案された情報は、希望に応じて、防衛省・自衛隊だけでなく、新しいサプライヤーを探している防衛関連企業へ共有される場合があります。ただし、単に「切削加工ができます」「板金加工ができます」と伝えるだけでは、自社の強みが十分に伝わりません。
相談する際は、次のような内容を具体的に整理しておく必要があります。
- 特殊な材料や難削材に対応できる
- 特定の形状や精度を実現できる
- 従来より納期やコストを改善できる
- 製造中止となった部品を再現できる
- 民生分野で培った技術を防衛用途へ応用できる
防衛分野で自社の技術がどのように役立つのかを明確にしたうえで相談することが重要です。

出典:防衛庁HP https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku_newentry.html
防衛産業参入促進展

防衛装備庁は、中小企業やスタートアップと、防衛省・自衛隊、防衛関連企業をつなぐ「防衛産業参入促進展」を開催しています。
会場では、自社の技術や製品を展示し、防衛関連企業の担当者と商談できる機会が設けられます。特に、次のような企業に向いています。
- 実物やサンプルを見せながら技術を説明したい
- 防衛関連企業の担当者と直接話したい
- 自社技術が防衛分野で活用できるか反応を確かめたい
- Webサイトや会社案内だけでは強みを伝えにくい
参加する際は、一般的な会社紹介だけでなく、対応材質、加工精度、設備、製作実績、改善効果などを一目で確認できる資料を用意しておくと効果的です。開催時期や出展条件は年度によって異なるため、最新の募集情報を確認する必要があります。
出典:防衛庁HP https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku_newentry.html
航空宇宙産業ビジネスマッチング
経済産業省と中小企業基盤整備機構は、J-GoodTechを活用した航空宇宙産業ビジネスマッチングを実施しています。
この制度では、航空宇宙関連の発注企業が具体的なニーズを公開し、それに対応できる加工会社や部品メーカーが提案を行います。過去には、次のようなニーズが公開されています。
- 航空機構造部品の機械加工
- 精密板金加工
- チタン材や難削材の加工
- 表面処理や熱処理
- 治工具の製作
- 大型部品の加工
- CFRPなど複合材料の加工
- 衛星部品の製造や試験
発注企業のニーズが具体的に示されるため、自社の技術と案件の適合性を判断しやすいことが特徴です。応募前には、J-GoodTechの企業情報を最新の状態へ更新し、設備、加工範囲、精度、材質、ロットなどを具体的に記載しておく必要があります。

地域の航空宇宙産業クラスター
各地域には、航空宇宙産業への参入を支援する企業グループや自治体のプロジェクトがあります。
地域の航空宇宙産業クラスターでは、次のような支援を受けられる場合があります。
- 発注企業との商談会
- セミナーや勉強会
- 展示会への共同出展
- 品質認証取得の支援
- 試験設備や検査設備の共同利用
- 他工程を担う企業の紹介
- 複数企業による共同提案・共同受注
例えば、切削加工だけを行う会社が、表面処理、熱処理、検査を担う企業と連携することで、発注企業へ一貫した生産体制を提案できます。自社だけではすべての工程を対応できなくても、地域企業と連携することで、受注できる案件の幅を広げられます。単独での航空宇宙産業への参入に不安がある企業や、協力会社を増やしたい企業に適した選択肢です。
出典:全国航空機クラスター・ネットワーク https://namac.jp/
JAXA宇宙戦略基金
JAXAの宇宙戦略基金では、宇宙輸送、衛星、探査、通信、部品・コンポーネント、製造プロセスなど、幅広い分野の技術開発を支援しています。
対象となるのは、スタートアップをはじめとする民間企業、大学、研究機関などです。主に、次のような取組が想定されています。
- 新しい衛星部品の開発
- ロケットや宇宙輸送に関する技術開発
- 宇宙環境に対応する材料・加工技術の開発
- 衛星製造の効率化
- 宇宙分野における新規事業の実証
- 海外展開を見据えた製品開発
ただし、宇宙戦略基金は、加工を依頼したい企業と加工会社を結び付ける発注窓口ではありません。既存の加工技術をそのまま売り込む制度ではなく、宇宙分野の課題解決につながる技術開発や事業化を支援する制度です。
そのため、
- 自社技術を宇宙分野でどのように活用できるのか
- どの課題を解決するのか
- どのような製品や技術を開発するのか
を明確にする必要があります。
出典:SPACE STRATEGY FUND 宇宙戦略基金 https://fund.jaxa.jp/
防衛生産基盤強化法に基づく支援
防衛生産基盤強化法では、防衛装備品を安定的に製造・供給するため、次のような取組を支援しています。
- 供給網の強靱化
- 製造工程の効率化
- サイバーセキュリティの強化
- 事業承継
- 装備品の安定製造
- 情報保全体制の整備
例えば、特定の部品や材料を1社だけに依存している場合の調達先複線化や、老朽化した生産設備の更新、サイバー攻撃に備えた情報管理体制の強化などが考えられます。ただし、これは防衛産業へ参入したい企業なら誰でも使える、一般的な補助制度ではありません。対象となる防衛装備品のサプライチェーンに関係していることや、所定の計画認定を受けることなどが前提となります。
これから取引先を探す段階の企業というより、すでに防衛関連の供給網に関わっており、生産能力や管理体制を強化したい企業向けの制度です。

出典:防衛装備庁「防衛生産基盤強化法」 https://www.mod.go.jp/atla/hourei_dpb.html
自社の段階にあった窓口を選ぶことが重要
相談先や支援制度は、自社が現在どの段階にいるかによって選ぶ必要があります。
- まず参入方法を知りたい
→ 防衛装備庁「新規参入相談窓口」 - 自社の技術を直接紹介したい
→ 防衛産業参入促進展 - 具体的な発注案件へ提案したい
→ 航空宇宙産業ビジネスマッチング - 他社と連携して参入したい
→ 地域の航空宇宙産業クラスター - 宇宙関連の新技術を開発したい
→ JAXA宇宙戦略基金 - 既存の防衛関連事業を強化したい
→ 防衛生産基盤強化法に基づく支援
すべての制度へ同時に申し込むのではなく、自社の技術、営業状況、参入段階に合ったものから活用することが重要です。
新たな取引先との接点づくりに「Eigyo Engine」の活用も
防衛・宇宙産業へ参入したいと考えても、
- どの企業が部品を発注しているのか分からない
- 自社の技術がどの製品に使えるのか分からない
- 大手企業へどのようにアプローチすればよいか分からない
- 営業担当者がおらず、新規開拓まで手が回らない
- 展示会や商談会以外の接点をつくれない
といった課題があります。
営業製作所が提供する「Eigyo Engine」では、防衛・宇宙産業に限らず、製造業の新規取引先開拓を支援しています。企業情報や発注ニーズをもとに、自社の設備、加工技術、得意分野と相性のよい企業を探し、発注企業との接点を増やします。

例えば、
- 精密切削を外注している装置メーカー
- 特殊材料に対応できる加工先を探している部品メーカー
- 試作品を少量から依頼できる企業を探している開発会社
- 既存サプライヤー以外の調達先を探しているメーカー
- 特定工程を任せられる協力会社を探している企業
など、自社の技術を必要としている可能性がある企業への営業活動を支援します。
もちろん、Eigyo Engineを利用すれば、防衛・宇宙関連の受注が保証されるわけではありません。また、品質認証や情報セキュリティなどの取引条件に代わるものでもありません。しかし、「参入したいが、どの企業へ営業すればよいか分からない」状態から、具体的な取引候補企業を探すための第一歩として活用できます。
Eigyo Engineに関する詳しい情報はこちら





