
スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどの先端技術を活用する農業です。自動で走るトラクター、作物を見分けて収穫するロボット、温度や水分を測って栽培環境を調整するシステムなど、さまざまな技術が開発・導入されています。
その背景にあるのが、農業の担い手の減少です。農林水産省の「スマート農業をめぐる情勢について」(2026年9月版)では、基幹的農業従事者は2023年の116万人から、今後20年間で約30万人まで減少することなどが見込まれています。
少ない人数で生産を続けるためには、農作業の自動化や省力化が必要です。技術の導入だけでなく、機械に合わせた栽培方法の見直しや、開発した技術を現場へ供給する取り組みも進められています。
製造業にとって注目したいのは、こうした機械を支える部品や装置です。農業向けの完成品をつくっていなくても、切削加工、板金、製缶、樹脂加工、装置組立などの技術が接点になる可能性があります。
この記事では、スマート農業の背景と主要技術、関連する機械・部品、自社技術を新規取引先開拓につなげる方法を解説します。
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1.スマート農業の仕組みと普及が求められる背景

1-1.自動化・情報共有・データ活用の役割
スマート農業の役割は、作業を自動化することだけではありません。農林水産省は、主な効果として「作業の自動化」「情報共有の簡易化」「データの活用」を挙げています。
- 作業の自動化:走行、草刈り、水管理などの作業を機械や遠隔操作に置き換える。
- 情報共有:作業記録や農地の情報を共有し、経験の浅い人も作業に参加しやすくする。
- データ活用:生育、気象、収量などのデータを使い、栽培方法や作業計画を改善する。
たとえば水管理では、現地へ行って確認していた水位や水温をセンサーで測り、スマートフォンで把握できます。機械とデータを組み合わせ、確認・判断・作業の負担を減らす考え方です。

出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について」(2026年9月版)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/smart_meguji.pdf
1-2.農業従事者の減少と生産方式の見直し
農林水産省の「スマート農業をめぐる情勢について」によれば、2023年の年齢構成では、基幹的農業従事者の平均年齢は68.7歳で、70歳以上が58.7%を占めています。ここでいう基幹的農業従事者とは、15歳以上の世帯員のうち、普段の仕事として主に自営農業に従事している人で、雇用者は含みません。
この状況で生産を維持するには、作業の一部を機械に置き換えるだけでなく、機械が働きやすい生産方式に変えることも重要です。たとえば収穫ロボットを導入する際には、作物の仕立て方や通路の配置も検討対象になります。
機械単体の性能と、現場で使い続けられる仕組みの両方が必要になるため、機器の開発に加えて、改良や設置、保守を担う企業にも注目する必要があります。

出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について」(2026年9月版)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/smart_meguji.pdf
2.主なスマート農業技術と開発・導入の動向

2-1.農作業ごとに使われる機械・システム
スマート農業には、屋外を走行する機械から、ハウス内の環境制御、収穫後の選別・包装まで、異なる分野の技術が含まれます。自社との接点を考える際は、農作業ごとに分けて見ると整理しやすくなります。
| 農作業・用途 | 主な技術 | 機械・システムの役割 |
|---|---|---|
| 耕起・田植え・移動 | ロボットトラクター、自動操舵 | 走行や操作を支援・自動化する |
| 除草・防除 | 自律走行草刈機、農薬散布ドローン | 人手を要する作業を省力化する |
| 収穫・運搬 | 収穫ロボット、追従運搬車 | 作物の収穫や運搬を支援・自動化する |
| 水管理・栽培環境 | 水管理システム、ハウス環境制御 | センサー情報に基づき水や環境を管理する |
| 選別・包装 | AI選果機、自動選別包装装置 | 判定や仕分け、包装を省力化する |

出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について」(2026年9月版)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/smart_meguji.pdf
2-2.技術の導入と開発を支える認定制度
2024年に施行されたスマート農業技術活用促進法には、農業者側の技術導入・生産方式の転換を扱う「生産方式革新実施計画」と、技術を開発・供給する側を扱う「開発供給実施計画」の認定制度があります。

出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について」(2026年9月版)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/smart_meguji.pdf
認定実績一覧には、2026年7月31日時点で開発供給実施計画が68件と記載されています。(これは同日時点の計画認定数であり、機械の販売台数や量産件数を示す数字ではありません。)
開発対象も多様です。以下は、資料に掲載された認定計画の例です。
| 企業 | 主な技術・製品 | 関連する具体的な動き |
|---|---|---|
| フタバ産業 | レーザー除草・害虫防除ロボット | 雑草の成長点などへのピンポイント照射を行う開発計画が掲載 |
| AGRIST | 施設きゅうりの自動収穫ロボット | 機能拡張により下葉かき・摘果を省力化する開発計画が掲載 |
| デンソー | 房取りミニトマト全自動収穫ロボット | 施設野菜向けの開発計画が掲載 |
| 城南製作所 | 追従運搬車 | 人を追従して走行する運搬車の開発計画が掲載 |
出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について」(2026年9月版)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/smart_meguji.pdf
※上記企業の外注募集や調達予定を示すものではありません。
3.スマート農機を構成する部品と製造業の参入接点
3-1.自社技術を機械の構成要素に置き換える
「農業向けの加工実績がない」と考える前に、自社が何をつくれるかを機械の構成要素に置き換えてみましょう。収穫ロボットなら、移動する部分、作物を認識する部分、収穫する部分、運ぶ部分などに分けて検討できます。
以下は、公開資料で確認した技術の用途から考えられる加工・部品の提案例です。個別企業の実際の構造や発注内容を確認した一覧ではありません。機種の仕様や内製・外注の方針によって、必要な部品は異なります。

切削加工会社なら「農機部品に対応できます」だけでなく、軸径や加工精度、対応材質、小ロットへの対応などを伝えると、設計・調達担当者が検討しやすくなります。板金会社なら、屋外用筐体の加工実績や、取付位置の変更を伴う試作への対応力などが説明材料になります。
3-2.使用環境と開発段階に合わせて提案する
農業機械は、土ぼこり、泥、水、振動などの影響を受ける環境で使われます。水や薬剤に接する装置、作物に接触する部品では、それぞれ異なる条件の確認が必要です。
商談では、材質や表面処理の指定、清掃方法、交換頻度、設置場所、求める寿命などを確認しましょう。屋外で使うという理由だけで、自社が特定の防水・耐食性能を保証できるわけではありません。
また、開発段階によって提案の内容は変わります。試作なら形状変更や短納期対応、実証なら破損・摩耗への改善、量産準備なら品質の安定や供給体制が検討項目になります。
「何を加工できるか」と「どの開発段階で役立てるか」をセットで示すことが、具体的な相談につながる提案の出発点です。
4.スマート農業関連の営業先を探す方法
4-1.完成品メーカーから周辺企業へ広げる
営業先の候補は、大手農機メーカーだけではありません。収穫ロボットや選別装置の開発企業、環境制御装置メーカー、農機向けユニットを供給する企業なども、自社技術との接点を検討する対象です。
候補を探す際は、農林水産省の認定計画一覧を入口として、各社の製品ページ、開発発表、展示会出展情報を確認します。そのうえで、機械の用途、開発段階、自社が供給できる部品の仮説を整理します。
認定一覧に名前があるだけで、外注需要があるとは判断できません。周辺の装置・ユニットメーカーまで調べ、設計・調達部門などの適切な窓口を確認する必要があります。

4-2.加工実績を相手の開発課題につなげる
最初の提案では、設備一覧だけを送るのではなく、相手の用途に合う実績を選びましょう。たとえば収穫ロボットの開発企業へは、小型可動部品の加工や形状変更への対応実績を、環境制御装置メーカーへは、筐体や取付金具の加工実績を示す方法が考えられます。
営業先ごとに「対象製品」「想定する部品」「自社の対応範囲」「確認したい事項」を記録しておくと、継続して提案しやすくなります。既存業界での実績を、材質・精度・数量・納期といった共通条件で説明することが重要です。
商談では、試作・量産の別、年間の想定数量、図面の有無、必要な評価試験、供給条件を確認し、自社が対応できる案件かを見極めましょう。
まとめ
スマート農業では、担い手の減少に対応するため、機械の自動化と生産方式の見直しが進められています。収穫、運搬、水管理、選別・包装などの技術には、加工会社や部品・装置メーカーが接点を検討できる領域があります。
新規開拓では、公開された開発情報を手がかりに、自社技術が使われる部品と、その部品を必要とし得る企業を具体化することが大切です。
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- フレーム・カバーの提案先となり得る自律走行農機や運搬車のメーカー
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- 搬送部品・架台の提案先となり得る選別・包装装置メーカー
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