INDEX
「気づけば、つい検索していた。」そんな経験、ありませんか?
スマートフォンの普及やSNSの台頭により、私たちは商品やサービスを知ってから購入に至るまでの間に、自ら積極的に情報を探し、さらにその情報を他者と共有するようになりました。このような消費行動の変容をわかりやすく示したフレームワークが、『AISAS(アイサス)の法則』です。
製造業の営業やマーケティングにおいても、この法則を理解することで、「顧客がなぜ、いつ、どのように製品情報を検索するのか?」そして「なぜその体験を共有するのか?」を把握でき、より顧客志向の戦略を立てることが可能になります。
「よりデジタル時代に合った営業・マーケ戦略を構築したい」「顧客が情報に接触する瞬間を逃さずフォローしたい」そんな方は、ぜひ最後までご覧ください。
営業やマーケティングに役立つ心理モデルに興味のある方は、こちらの記事もおすすめです。
AISASの法則とは?
『AISAS(アイサス)の法則』は、インターネットの普及と情報流通の高速化を背景に、電通が提唱した消費行動モデルです。
主に以下の5つのステップで、現代の消費者行動を整理します。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(共有)
AIDMAが新聞広告やテレビCMといったマスメディアを前提とした「受動的」な消費行動モデルであったのに対し、AISASは「検索」という能動的な情報収集行動と、「共有」による情報拡散行動を組み込み、消費者が主体的に情報との接点を持つ現代環境に対応しています。
AISASの5つのステップ
- Attention(注意)
顧客が商品やサービスの存在、またはブランドを初めて認識する段階です。
オンライン広告、展示会でのブース、SNS上の話題、プレスリリースなどあらゆる「きっかけ」によって注意が喚起されます。 - Interest(興味)
「ちょっと気になるな」と思わせる状態です。顧客はこの段階で、より詳しい情報に触れたいという欲求を芽生えさせます。
コンセプト動画、製品スペック表、導入事例、オウンドメディアの記事などで顧客の関心をより深めることが重要です。 - Search(検索)
最も現代的な特徴と言える段階です。顧客は興味を持った商品を、スマホやPCで自ら検索します。製造業なら「製品名+評判」や「導入事例+業界名」「製品カテゴリー+比較」といった形で検索することが多いでしょう。
ここで適切な情報がオンライン上に用意されていれば、顧客はより確信を深め、購買行動へ近づきます。 - Action(行動)
検索で集めた情報を基に、顧客は実際に購入、問い合わせ、サンプル請求、オンライン商談申し込みなど、具体的な行動に移ります。BtoB製品の場合、価格交渉や詳細な納期・仕様の確認などがこの段階で行われます。 - Share(共有)
購入・導入後、顧客がその体験や知見をSNS、口コミサイト、専門フォーラムなどで共有します。これにより、他の潜在顧客が新たに「Attention(注意)」を得るきっかけが生まれ、情報が循環するのがAISASの大きな特徴です。
AISASの法則を活用するメリット
デジタル時代の消費行動を的確に捉えられる
消費者は自ら必要な情報を能動的に探します。AISASを理解することで、こうした「情報探索行動」に対応したコンテンツ戦略が立案でき、顧客満足度を高めることが可能です。
オンライン接点強化による効率的な集客
「Interest(興味)」から「Search(検索)」への移行ポイントで、質の高いコンテンツやSEO対策済みの情報があれば、自然と見込み顧客を自社サイトへ誘導できます。
これにより、営業担当者への接触前に顧客が知識を蓄え、問い合わせ時点ですでに有望なリードに成長しています。
共有(Share)によるブランド認知度・信頼度アップ
購入後、満足した顧客がSNSや口コミサイトでポジティブな情報を共有すれば、新たな見込み客が生まれます。
この「共有」の連鎖は広告出稿費を抑えつつ、信頼性の高い口コミによるブランド価値の向上をもたらします。
専門性の高い製品を扱う製造業でも、AISASは有効です。
顧客は単純なコモディティ商品と異なり、性能比較、信頼性、導入実績、アフターサポートなどをじっくりと調べます。AISASを念頭に、顧客が検索する際に欲しい情報を的確に提供することで、商談成立率を高めることができます。
各ステップの具体例
- Attention(注意)
- 具体例: 業界専門展示会で目立つ看板や動態デモを行い、「何だろう、この装置?」と顧客の目を引く。
- 実施例: 展示会のフォロースルーとして、名刺交換をした相手に展示会動画リンクをメールで送付し、オンライン上でも「注意」を継続。
- Interest(興味)
- 具体例: カタログに加え、技術解説記事や動画、導入事例を公式サイトで公開。「生産ラインでこの装置を導入すると、どの程度省人化できるのか?」といった顧客の疑問に答える。
- 実施例: 展示会後に送るメールに「成功事例集PDF」へのダウンロードリンクを含める。
- Search(検索)
- 具体例: 顧客が「製品名+口コミ」や「導入事例+業界名」を検索すると、ブログ記事、ホワイトペーパー、YouTube解説動画などがヒットする。
- 実施例: SEO対策やリスティング広告を行い、製品情報ページが検索結果の上位に表示されるようにする。また、社内エンジニアが技術ブログを書くことで、専門的な検索ワードにも対応。
- Action(行動)
- 具体例: オンライン上でフォームから見積もり依頼、またはビデオ商談予約。顧客がスムーズに次のステップへ進めるよう、UIを最適化。
- 実施例: サイト上に「24時間以内に回答」の問い合わせフォームを設置。製品ページには「お試しサンプル申込」ボタンを常時表示。
- Share(共有)
- 具体例: 導入顧客が「この製品のおかげで、不良率が20%減少した」とLinkedInやTwitterで発信。それを受け、新たな見込み顧客が「どの製品だろう?」と再検索。
- 実施例: 公式SNSで顧客インタビュー記事をシェアし、顧客もそれをフォロワーに再シェア。成功事例動画をYouTubeに投稿すると、他社担当者が参考動画として部内で回覧するなど、情報拡散が広がる。
AISASの法則を営業活動に取り入れる方法
Webコンテンツ戦略への反映
AISASを意識し、顧客が「検索(Search)」しそうなキーワードに合わせた製品解説記事や比較表、FAQコーナー、技術ホワイトペーパーを充実させる。
弊社でも、売上を伸ばしたい方や製造業の最新情報を知りたい方向けの記事を多数ご用意しています。
コラム記事一覧へ
カスタマージャーニー設計でのAISAS活用
カスタマージャーニーマップを作成し、AttentionからShareまでの流れにおいて、顧客接点ごとに提供すべき情報や施策を明確化。
カスタマージャーニーマップは、お客さんが何かを買うまでや使うまでに通る道のりを図にしたものです。
例)展示会→公式サイト→問い合わせ→導入後インタビュー公開といった流れをシナリオ化する。
KPIをAISASに基づいて設定
・Attention: 広告のインプレッション数、展示会での名刺獲得数
・Interest: メルマガ登録数、ホワイトペーパーダウンロード数
・Search: オーガニック検索流入数、平均サイト滞在時間
・Action: 見積もり依頼数、オンライン商談予約数、成約率
・Share: SNS上での製品言及数、レビューサイトでの星評価、成功事例投稿数
営業・マーケティング一体型の情報発信体制構築
営業が顧客ニーズをマーケティングにフィードバックし、マーケは顧客が検索したくなる記事コンテンツを強化。
さらに、その情報を営業が商談時に活用することで、顧客体験が統合的に最適化される。
購入顧客にインタビューやレビュー投稿を依頼し、SNSで拡散可能なコンテンツを提供。
顧客同士の情報共有を促すことで、結果として新たなAttentionを獲得するサイクルを生み出す。
AISAS以外のモデルとの比較や組み合わせ
AISASはあくまで一つのフレームワークであり、AIDMA、AISCEAS、SIPSモデルなどと比較しながら使うことで、より実践的な戦略立案が可能になります。たとえば、
- AIDMA: 伝統的なマス広告時代のモデル。AISASと比較すれば、「Search」「Share」が重要性を増している点が浮き彫りになります。
- AISCEAS: InterestとSearchの間に「Compare(比較)」が入り、さらにEvaluation(評価)が入るモデル。製造業では比較・評価ステップが特に重要な場合、AISCEASの視点が有効です。
これらのモデルを組み合わせて、自社の顧客行動に最適化したフレームワークを構築すると、より強固な戦略が策定できます。
まとめ
AISAS(アイサス)の法則は、デジタル環境で自ら情報を探し、共有する現代消費者の行動を的確に表したフレームワークです。製造業においても、製品情報をオンラインで検索する顧客行動は一般的になり、オンライン上での情報整備や顧客満足度向上による「共有」効果がビジネス成果に直結します。
AISASを理解すれば、AttentionからShareまでの流れを設計し、顧客がどの段階でも求める情報にアクセスできる仕組みを作ることができます。これにより、自然な形で顧客体験を向上させ、ブランドロイヤリティや成約率を高めることが可能です。
他のモデルや理論も参考にしながら、AISASを柔軟に活用し、デジタル時代の営業・マーケティングで競合優位を確立しましょう。今後も、営業・マーケティングに役立つ考え方や事例を紹介していきますので、ぜひ他の記事もご覧ください。