製造業に役立つコンテンツ特集 全固体電池の量産へ!トヨタ自動車の取り組みを徹底解説

業界地図

  • 記事公開日/
  • 最終更新日/

INDEX

近年、地球温暖化対策として、自動車の電動化が世界中で加速しています。その中でも、バッテリー式電気自動車(BEV)は、走行距離や充電時間などの課題克服に向けた技術開発が活発に進められています。
そんな中、トヨタ自動車は、次世代電池として注目される「全固体電池」の量産化に向けた取り組みを進めています。これは、BEVの普及を加速させ、モビリティの未来を変える可能性を秘めた大きな一歩です。

本記事では、トヨタ自動車の全固体電池量産化に向けた取り組みについて、詳しく解説します。全固体電池とはどのような技術なのか、トヨタがどのような課題に取り組んでいるのか、そして量産化に向けてどのようなスケジュールで進めているのかなどを、わかりやすくご紹介します。

全固体電池の量産へ!トヨタ自動車の取り組みを解説

トヨタ自動車は、全固体電池の量産に向けて、出光興産との協業を発表しました。

全固体電池は、充電時間の短縮、航続距離の延長、安全性の向上など、今までの電動車(EV)の課題を解決し、未来を大きく変える可能性を秘めています。両社の取り組みによって2027〜2028年の商用化を目指しています。

ここでは、全固体電池の特徴やトヨタと出光興産の協業について詳しく解説します。

トヨタと出光興産が手を組み全固体電池の量産化へ!

トヨタと出光興産は、2027〜2028年頃の商用化を目指し、全固体電池の性能向上と量産化に向けた取り組みとして、生産設備の整備や、全固体電池を搭載したEVの実証実験も行い、性能や信頼性の検証を進めており、両社の持つ技術力と経験を結集することで、全固体電池の実用化に向けた大きな進歩が期待されています。

これらの取り組みにより全固体電池の商用化が実現すれば、EV市場において大きな革新がもたらされ、私たちの仕事や暮らしにも大きな影響を与えることになります。

全固体電池ってどんな電池?

リチウムイオン電池を活用した電気自動車(EV)の普及が進む中、充電時間や航続距離、安全性といった課題が浮き彫りになってきました。
そのような現状の中で次世代電池として期待されているのが「全固体電池」です。

全固体電池は、急速な充電が可能になるため、待ち時間を大幅に削減できます。

また、エネルギー密度が高く、同サイズの電池でより多くの電力を貯蔵できるため、一回の充電でより長い距離を走行することが可能になります。
さらに、固体電解質を使用するため、リチウムイオン電池のように漏液や火災のリスクが低く、安全性が高いことも大きな特徴です。

このような特徴を持つ全固体電池を搭載した電気自動車(EV)が実用化されれば、従来のリチウムイオン電池で生じる問題を解決することができます。

ただ、量産化には課題も多く、コストも高いため、実用化には時間がかかると考えられてきました。

全固体電池がもたらす自動車産業の未来

トヨタと出光は、それぞれの技術を組み合わせることで、全固体電池の課題を克服し、全固体電池の量産化を実現することを目指すことになったのです。

トヨタは自動車の開発・製造技術では世界トップレベル、出光は電池材料の開発・製造技術に強みを持っています。

全個体電池の量産化はEVの普及を加速させるだけでなく、自動車産業全体に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

また、スマートフォンやノートパソコンなどの小型電子機器にも応用される可能性があり、私たちの生活をより便利で快適なものにしてくれるでしょう。


全個体電池の特徴についてこちらの記事でより詳しく解説しています。

トヨタと出光が全固体電池量産で協業する背景

上記でもお伝えした通り、2023年にトヨタ自動車と出光興産は、「全固体電池」の量産化に向けた協業を発表しました。

ここでは、その背景や協業内容、技術開発、量産化に向けての取り組みについてお伝えしていきます。

トヨタの「マルチパスウェイ」戦略


出典:トヨタ、クルマの未来を変える新技術を公開|トヨタ自動車公式サイト

トヨタ自動車は、カーボンニュートラル社会(地球環境の保全、温室効果ガス排出量ゼロ、脱炭素社会など)の実現に向け、様々な電動車技術を開発・導入してきた「マルチパスウェイ」戦略を掲げています。
その中で、バッテリー式電気自動車(BEV)は重要な選択肢の一つとして位置付けられています。

従来のハイブリッド車やプラグインハイブリッド車と比べて、BEVは走行時に二酸化炭素を排出しないため、環境負荷を大幅に低減することができます。さらに、静粛性や加速性能といった点でも優れています。

一方で、全固体電池の量産化には課題も存在します。その最大の課題は、充放電を繰り返すことで、正極・負極と固体電解質の間に亀裂が発生し、電池性能が劣化してしまうことです。

この課題を克服するためには、亀裂発生を抑制する材料や構造の開発が必要となります。トヨタと出光は、それぞれの技術力を結集し、この課題解決に取り組んでいます。

トヨタと出光の協業内容

トヨタと出光は、全固体電池の量産化に向けて、以下の2つの協業内容を掲げています。

①固体電解質の量産化とサプライチェーン構築

全固体電池の量産化には、高性能な固体電解質の開発と安定供給体制の構築が不可欠です。両社は、それぞれの技術力を活かして、以下の取り組みを進めています。

  • 出光:硫化物系固体電解質の量産化技術の開発・実用化
  • トヨタ:固体電解質の品質・コスト向上、量産設備の開発・導入
  • 共同:固体電解質の安定供給体制の構築

出光は、1990年代半ばから硫化物系固体電解質の研究開発を進めており、現在も量産化に向けた技術開発を加速させています。一方、トヨタは、自動車生産の経験を活かして、量産設備の開発・導入を進めています。

両社は、これらの技術を融合することで、高性能な固体電解質を安定供給し、全固体電池の量産化を実現することを目指しています。

②2027~28年にBEV搭載全固体電池生産開始、量産基盤構築

2027年から2028年頃を目標に、BEVに搭載できる全固体電池の生産を開始し、量産基盤を構築することを目指しています。

具体的には、以下のスケジュールで取り組みを進めていく予定です。

2023年:固体電解質のパイロット生産設備を稼働し、量産化に向けた検証を実施

2024年:固体電解質の量産設備を本格導入

2025年:固体電解質の安定供給体制を構築

2026年:BEV搭載全固体電池の試作・評価

2027~28年:BEV搭載全固体電池の量産開始

このスケジュールを達成するためには、技術開発の加速に加え、生産設備の導入やサプライチェーンの構築など、多くの課題を克服する必要があります。

トヨタと出光は、全固体電池の量産化に向けて全力で取り組んでおり、2027年から2028年頃には、BEV搭載全固体電池を市場に投入することを目指しています。

トヨタと出光が協業で行う技術開発

トヨタと出光は、全固体電池の量産化に向けて、以下の2つの技術開発を進めています。

①出光が開発した固体電解質

固体電解質は、全固体電池の性能を左右します。従来の固体電解質は、硬くて脆いため、充放電を繰り返すことで亀裂が発生しやすく、電池性能が劣化してしまうという課題がありました。

そこで、出光は、柔軟性・密着性・耐割れ性に優れた硫化物系固体電解質を開発しました。

この固体電解質は、曲げたり伸ばしたりなど、電池の形状に柔軟に対応できる特徴を持っています。また、正極・負極材と密着しやすく、電池内部の抵抗を低減できます。さらに、充放電を繰り返しても亀裂が発生しにくいため、電池性能の劣化を抑えることが可能です

これらの特徴により、出光の固体電解質は、従来の固体電解質よりも高い性能と耐久性を発揮することが期待されています。

②トヨタの技術と組み合わせ性能・耐久性を両立

出光の固体電解質に加え、トヨタグループの高容量・高出力に対応できる正極・負極材や電池セルを製造・組み立てする技術を組み合わせることで、全固体電池の性能と耐久性をさらに向上させる取り組みが進められています。

全固体電池の量産化に向けて

全固体電池の量産化に向けて、トヨタと出光が進めている取り組みは以下の通りです。

①品質・コスト向上、量産化検証、安定供給の体制構築

全固体電池の量産化には、高品質で低コストな固体電解質を安定供給することが不可欠です。そのため両社では、以下の取り組みを進めています。

  • 不純物や欠陥を極力少なくし高性能な固体電解質を開発
  • 製造工程の効率化や材料コストの見直し
  • パイロット設備を使った量産化検証
  • 生産拠点の整備やサプライチェーンの構築

これらの取り組みを通じて、両社は、2027年から2028年頃には、BEV搭載全固体電池を量産することを目指しています。

②技術・調達・物流・生産技術メンバー数十名のタスクフォース設置

全固体電池の量産化に向けて、両社は、技術・調達・物流・生産技術メンバー数十名のタスクフォースを設置しました。

具体的には、以下の活動を行っています。

  • 固体電解質の性能向上や量産技術の開発
  • 材料や設備の調達
  • 生産拠点間の部品や製品の輸送
  • 量産設備の導入や製造工程の改善

タスクフォースの活動を通じて、両社は、量産化に向けた課題を迅速かつ効率的に解決していくことを目指しています。

まとめ

本記事では、トヨタ自動車が次世代電池「全固体電池」の量産化に向けて取り組んでいる内容について詳しくお伝えしました。

全固体電池は、従来のリチウムイオン電池よりも安全性が高く、エネルギー密度も高いため、BEVの普及を加速させる可能性を秘めています。トヨタ自動車は、出光興産と共同で、全固体電池の量産化に向けた技術開発と量産体制の構築を進めており、2027年から2028年頃の量産開始を目指しています。

全固体電池は、私たちの仕事や生活を大きく変える可能性を秘めた技術です。今後は、技術開発と量産化体制の構築がさらに加速していくことが予想され、部品の加工や、設備の設計などの製造業向けの仕事も拡大していき、これらの製造事業所が新しい取引先を求めている事も考えられます。

営業製作所では、製造業に特化した独自のマッチングサービス「Eigyo Engine」を使い、貴社の技術が活かせる企業を全国からリサーチ・お引き合わせしています。

月額パート1名分の金額で、年間5,000万円以上の売上を創出した事例もございますので、少しでも気になった方はぜひこちらからお問合せくださいませ。

営業製作所に関するお問い合わせはこちらから