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近年、製造業界では効率化と生産性向上が喫緊の課題となっています。
レーザー加工機のような高度な技術を導入することは、精度の高い加工が可能となり、多様な材料への適応、作業時間の短縮、コスト削減など、事業の競争力を大幅に向上させることができます。
しかし、これらの先進技術の導入は大きな初期投資を要するため、多くの中小企業や小規模事業者にとって大きな負担となります。
このような背景のもと、政府や公的機関では、中小企業や小規模事業者の技術革新と生産性の向上を支援するための補助金制度を多数設けています。
これらの補助金は、レーザー加工機の導入をはじめとする、ものづくりに関わるさまざまな設備投資や技術導入に活用することができます。
補助金の活用は、事業の持続可能な成長を実現するための重要な手段となります。
本記事では、レーザー加工機の導入に特に活用できる5つの補助金を取り上げます。
それぞれの補助金の概要、目的、対象経費について徹底的に解説していますので、上手く活用して、技術導入の検討を進めてみてください。
レーザー加工機の導入に活用できる、主な補助金は次の5つです。
- ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 省エネルギー投資促進支援事業費補助金(省エネ補助金)
- 中小企業省力化投資補助事業(省人化・省力化補助金)
補助金の概要をはじめ、目的、対象経費について詳しく解説します。
また、補助金を活用するメリット・デメリットについても解説していますので、十分に考慮して申請を進めてください。
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は、中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する補助事業により全国中小企業団体中央会が管理・運用するものです。
補助金の目的
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が直面する様々な制度変更や社会的要求に対応し、競争力を維持・向上させるための支援策です。
具体的には、新しい製品やサービスの開発、生産プロセスの効率化、および省力化など、生産性を高める設備投資を促進することが目的です。
補助金による支援を受けることで、事業者は制度変更への対応はもちろん、生産性の大幅な向上を実現することが可能になります。これにより、企業はより高い付加価値を生み出し、経済活動における競争力を高めることができます。
補助金の対象
この補助金では、
- 省力化(オーダーメイド)枠
- 製品・サービス高付加価値化枠
- グローバル枠
に分かれています。
①省力化(オーダーメイド)枠
この枠組みは、特にカスタマイズされた設備やシステムの導入を支援し、労働力不足の問題解決及び生産プロセスの革新を目的としています。デジタル技術の活用による専用設備の導入が、作業の効率化と高度化を促進します。
②製品・サービス高付加価値化枠
通常類型:このカテゴリーでは、市場に新しい価値を提供する製品やサービスの開発を目指す事業のための設備やシステムの導入を支援します。
成長分野進出類型(DX・GX):デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)など、将来成長が期待される分野での革新的な製品やサービス開発を目指す事業の設備やシステム投資を支援します。
③グローバル枠
国内の生産性向上を目指し、海外事業展開を計画する企業を対象に、必要な設備やシステムの導入を支援します。これには、海外での直接投資、海外市場への輸出、インバウンド対応、海外企業との共同事業などが含まれます。
参考『ものづくり補助金総合サイト』
事業再構築補助金
「事業再構築補助金」は、中小企業庁より採択され、中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構のもとに運用されている事業です。
補助金の目的
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の拡大による長期的な経済影響に直面し、売上や需要の回復が困難な状況下での中小企業等の支援を目的としています。
ウィズコロナ・ポストコロナ時代における経済および社会の変化への対応策として、新しい市場への進出、業界内での新たな分野への展開や業態の転換、さらには事業や業種の変更、事業の再編、国内へのビジネス回帰、またこれらの施策を通じて事業の規模を拡大することを目的とした、大胆な事業再構築に挑む企業への挑戦を支援することにより、日本経済の根本的な構造変化を促進することを意図しています。
この補助金を利用することで、企業は不確実な時代を生き抜くための新たなビジネスモデル構築や市場ニーズへの迅速な対応、そして経済的基盤の強化を目指すことができます。
補助金の対象
事業再構築補助金の対象となる経費は、事業の拡大や進化に資する有形・無形の事業資産への投資を対象としています。
これには、明確に事業拡張につながるものとして特定可能な経費が含まれます。具体的には以下のような経費が該当します。
①機械装置・システム構築費
事業運営に必要な機械装置や工具の購入、製造、レンタルコスト、専用ソフトウェアや情報システムの開発・購入・レンタル費用、これらの改善・修繕、設置、運送に関わる経費。
②技術導入費
事業を実行する上で必要となる知的財産権の導入にかかる経費。
③専門家経費
事業実行にあたり外部の専門家に支払う費用。
④その他
建物費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費、廃業費
参考『事業再構築補助金』
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所の管轄地域において事業を営んでいる小規模事業者などを対象に、商工会議所が実施している補助金制度です。
補助金の目的
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者などが、物価高騰、賃金の上昇、インボイス制度の導入など、近年及び今後数年に渡って続くと予想されるさまざまな経済的変動や制度の変更に対応することを目的としています。
地域経済の基盤となる小規模事業者等の販路拡大や生産性の向上、持続可能な成長を支援するために設けられました。
補助金の対象
小規模事業者等が策定した持続可能な経営計画に沿った、販路開拓や市場参入のための革新的な販売戦略、新たな顧客獲得に資する商品やサービスの改良・開発などの取り組みに対して支援します。
具体的には、①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、⑤旅費、⑥開発費、⑦資料購入費、⑧雑役務費、⑨借料、⑩設備処分費、⑪委託・外注費
レーザー加工機をはじめとする、機械装置の費用に活用することができ、補助事業の遂行に必要な機械装置の購入に要する経費が対象となっています。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金(省エネ補助金)
「省エネルギー投資促進支援事業費補助金(省エネ補助金)」とは、エネルギー消費効率等の基準を満たした設備の導入に対して、一般社団法人環境共創イニシアチブが、代表幹事として執行する補助金事業です。
補助金の目的
省エネ補助金の目的は、省エネルギー対策を通じて、国内外の経済的・社会的環境に適応した持続可能なエネルギー消費構造を構築することにあります。
事業者が省エネルギー対策を実施することで、エネルギー使用の効率化はもちろん、環境への負担軽減にも貢献し、経済的利益と社会的価値の両面での成果を期待できます。
補助金の対象
省エネ補助金の対象は、省エネ性能を大幅に向上させる設備やシステムの導入の支援としています。
これには、エネルギー消費を抑える最新のユーティリティ設備や生産設備の更新、及びエネルギーの計測、可視化、制御を行うエネルギーマネジメントシステムの構築が含まれます。これらの技術は、事業運営の効率化とエネルギーコストの削減につながります。
参考『省エネルギー投資促進支援事業』
中小企業省力化投資補助事業(省人化・省力化補助金)
「中小企業省力化投資補助事業(省人化・省力化補助金)」とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が、中小企業等が直面する人手不足問題に対応し、売上拡大と生産性の向上を実現する目的で展開する支援策です。
補助事業の目的
中小企業省力化投資補助事業の目的は、即効性のある省力化技術を取り入れることで、中小企業の生産性を向上させることにあります。
これにより、企業の付加価値の向上を図り、結果として賃金の上昇にも繋げることができます。技術導入による省力化は、人手不足解消のみならず、事業運営の効率化にもつなげることができます。
補助事業の対象
中小企業省力化投資補助事業の対象は、IoTやロボットといった、広範囲にわたる省力化に効果的な技術の導入の支援となっています。
これらの技術は、業務の自動化や効率化を可能にし、人手不足の問題を軽減する上で大きな役割を果たします。
参考『令和5年度補正予算「中小企業省力化投資補助事業」に係る事務局の公募について』
補助金制度を利用するメリット・デメリット
事業者が補助金を活用する際には、下記に掲げるメリット・デメリットを十分に考慮しなければなりません。
補助金制度を利用するメリット
1. 初期投資の負担軽減
補助金を活用することで、新しい技術や設備、特に高額な投資が必要なものの導入に際して、事業者は大きな経済的支援を受けることができます。
これにより、資金繰りに関するプレッシャーが軽減され、企業は自己資金を他の重要な事業活動に充てることが可能になります。
結果的に、初期段階での財務負担が軽くなり、事業拡大への道がスムーズになります。
2. 事業の競争力向上
最新の技術や設備を導入することで、製品の品質が向上し、生産プロセスが効率化されます。これは、市場での競争力を大きく高めることにつながります。
製品やサービスの質が向上することで顧客満足度が高まり、さらに、生産コストの削減や効率化により価格競争力が強化されるなど、多方面でのメリットが期待できます。
3. 新たなビジネスチャンスの創出
補助金を活用して新しい技術やサービスを開発することは、未開拓の市場への進出や新しい顧客層の獲得といった、新たなビジネスチャンスを生み出すことに繋がります。
新しい市場に足を踏み入れることで、企業はさらなる成長機会を得ることができ、持続可能な事業展開が可能になります。
補助金制度を利用するデメリット
1. 申請手続きの煩雑さ
補助金を申請する過程は、多くの場合、複雑で時間を要する作業です。申請者は、事業計画の具体性や実現可能性を証明するために、詳細な事業計画書を提出する必要があります。
この事業計画書には、市場分析、財務予測、プロジェクトのスケジュール、目標達成のための戦略など、詳細な情報が求められます。
また、補助金によって定められた特定の条件や基準を満たしていることを明示する必要があり、これらの準備には専門知識や多大な労力が必要になることがあります。
2. 前払いでもらえない
多くの補助金制度では、支援金は事業者が自己資金でコストを支払った後に、補助金として返金される形を取ります。
これは、「後払い制度」とも呼ばれ、事業者はプロジェクトの開始や設備の購入など、必要な投資を行うためには、まず自己資金を用意する必要があります。
特に資金調達が難しい小規模事業者にとって、この前払いが大きな負担となることがあり、資金繰りの計画において重要なポイントとなります。
3. 採択率の問題
補助金の申請は非常に競争率が高く、多くの事業者が限られた資金を目指して競い合います。そのため、申請したからといって必ずしも補助金が採択されるわけではありません。
実際には、一度の申請で採択されないことも珍しくなく、成功するまでに複数回申請する必要がある場合もあります。時間と労力を要し、事業計画の遅延を招く原因となることもあります。
ものづくり補助金の活用事例
株式会社玉野鈑金工業様
企業様サイト:https://kyokko-tsushin.co.jp/
【ものづくり補助金活用の背景】
当社は、顧客の図面に基づく加工から塗装までの一貫生産を行っています。従来、機械加工部品は外注に依存していましたが、納入リードタイムなどの問題から短納期依頼への対応が困難で、受注機会ロスが発生するケースがありました。また、溶接・組立工程では、経験や感覚などの人的スキルへの依存度が高く、品質維持のための仕上げや歪み修正などの負担が大きく、総体的な効率化が課題となっていました。
【ものづくり補助金の活用目的】
本事業では、新設備の導入により、作業前段のレーザー加工精度を向上させることで、リードタイム短縮と内製化によるローコストのものづくりと高品質化の両面を実現し、企業価値の向上を目指しました。
【ものづくり補助金活用の結果】
最新鋭の3軸リニアドライブレーザー加工機を導入した結果、以下の成果が得られました。
・リニア駆動による安定した高精度加工で部品品質向上と加工範囲拡大を実現 ・レーザー加工への転換で機械加工部品の内製化、短納期化、作業時間短縮、コスト削減を達成 ・安定したレーザー加工精度により、人的スキルへの依存から脱却し、技術伝承と全体のものづくりレベル向上を実現 ・加工速度向上で加工時間を約30%短縮、加工コストを約40%軽減 ・抜き加工の精度向上・安定化が後工程の作業性効率向上と業務標準化、技能伝承に寄与
ものづくり補助金の活用により、レーザー加工の高精度化とスピードアップを果たし、リードタイム短縮と内製化を実現。人的スキルへの依存を減らし、技術伝承と全体の生産性向上にもつなげることができました。
まとめ
この記事では、レーザー加工機の導入を支援するために利用可能な5つの主要な補助金制度について紹介しました。
それぞれの補助金は、中小企業や小規模事業者が直面する経済的課題を軽減し、技術革新を促進するために設計されています。
これらの補助金を活用することで、事業者は初期投資の負担を大幅に軽減し、レーザー加工機の導入による生産性の向上、コスト削減、品質の改善など、数多くのメリットを享受することが可能です。
ただし、申請にあたっては各制度の詳細をよく理解し、事業計画との整合性を確認することが重要です。
適切な補助金を活用することで、技術革新を実現し、事業の競争力を高めることができますので、事業の持続的な成長と発展に向けて、有効に活用してみてください。