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「NC旋盤を導入して生産効率の向上を図りたい!」
「職員の残業などの負担を軽減して、働きやすい環境を作りたい!」
このように考えている企業は少なくありません。しかし、新しい設備の導入は大きな初期投資が求められることになります。
この負担を軽減し、生産性の向上を目指す企業に向けて、国や自治体から提供される補助金が存在します。
補助金をうまく利用することで、旋盤の導入コストを大幅に削減し、長期的な競争力の強化につなげることが可能です。
そこでこの記事では、「旋盤の導入に使える補助金」について詳細に解説し、どのようにしてこれらの支援を得られるのかを紹介しています。
企業の生産性向上だけでなく、働く環境の改善にも繋がるこれらの補助金の導入について、ぜひ参考にしてみてください!
事業再構築補助金
旋盤加工機(NC旋盤・CNC旋盤)の導入には『事業再構築補助金』が活用できます。その特徴について詳しくご紹介しましょう。
事業再構築補助金とは
アフターコロナの時代に入り、中小企業や中堅企業、個人事業主、そして企業組合などは、新たな事業モデルへの転換や事業再構築が急務となっています。
『事業再構築補助金』は、こうした企業が直面する困難を克服し、持続可能な成長への道を切り開くためのサポートを提供することを目的としています。
事業再構築補助金の目的は、新しい事業機会への挑戦や、生産性の向上を図るための設備投資、働き方改革を推進するための施策など、事業再構築を支援することにあります。事業再構築補助金を利用することで、NC旋盤の導入を含む生産効率の向上や、労働環境の改善による働きやすい職場の実現など、企業が直面する多くの課題に対処するための貴重な機会を得ることができます。
中小企業、中堅企業、個人事業主、および企業組合など、幅広い事業体を支援の対象としており、それぞれに要件が定められています。例えば、製造業の場合、『資本金3億円以下の会社、または従業員数300人以下の会社、および個人』となっています。
この補助金には次の8つの事業類型が設定されています。
- 成長枠
- グリーン成長枠
- 卒業促進枠
- 大規模賃金引上げ促進枠
- 産業構造転換枠
- サプライチェーン強靭化枠
- 最低賃金枠
- 物価高騰対策・回復再生応援枠
また、以下の通り、それぞれに補助率と補助金額が定められています。
事業類型 | 補助率 | 補助金額 |
成長枠 | 中小企業者等:1/2 中堅企業等:1/3 | ■従業員数 20 人以下:100万円~2,000万円 21~50 人:100万円~4,000万円 51~100 人:100万円~5,000万円 101人以上:100万円~7,000万円 |
グリーン成長枠 | 中小企業者等:1/2 中堅企業等:1/3 | ■従業員数(中小企業者等) 20人以下:100万円~4,000万円 21~50人:100 万円~6,000万円 51人以上:100万円~8,000万円 |
卒業促進枠 | 中小企業者等:1/2 中堅企業等:1/3 | 成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる |
大規模賃金引上げ促進枠 | 中小企業者等:1/2 中堅企業等:1/3 | 100万円~3,000万円 |
産業構造転換枠 | 中小企業者等:2/3 中堅企業等:1/2 | ■従業員数 20人以下:100万円~2,000万円 21~50人:100 万円~4,000万円 51人~100人:100万円~5,000万円 100人以上:100万円~7,000万円 |
最低賃金枠 | 中小企業者等:3/4 中堅企業等:2/3 | ■従業員数 5人以下:100万円~500万円 6~20人:100 万円~1,000万円 21人以上:100万円~1,500万円 |
最物価高騰対策・回復再生応援枠 | 中小企業者等:2/3 中堅企業等:1/2 | ■従業員数 5人以下:100万円~1,000万円 6~20人:100 万円~1,500万円 20人~50人:100万円~2,000万円 51人以上:100万円~3,000万円 |
事業再構築補助金の採択率・採択事例
事業再構築補助金の直近3回の採択率は以下の通りとなっています。
締切回・受付締切日 | 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
9回(令和5年3月24日) | 9,369 | 4,259 | 45.5% |
10回(令和5年6月30日) | 10,821 | 5,205 | 48.1% |
11回(令和5年10月6日) | 9,207 | 2,437 | 26.4% |
30%から50%程度の採択率で推移しており、ほかの補助金と比較して、やや厳しいハードルとなっています。旋盤(NC旋盤・CNC旋盤)の導入にかかる採択事例には次のものがあります。
参考:事業再構築補助金 第10回公募 採択案件一覧
①新技術導入の旋盤機を活用した難削材精密加工による医療分野進出
『金属部品旋盤加工業を営み配管部品の売上が多いが、市場拡大が見込めない。そんな折、血液ホースの継手部品の引き合いがあった。難削材加工の必要があり、旋盤機を導入して医療機器の精密部品市場に進出する。』ー株式会社飯塚製作所様
②「重量管理を伴う部品加工」を最新鋭5軸複合加工機導入で工程集約し、高精度化する。
『最新鋭5軸複合加工機の導入で機上測定を可能とし、旋盤加工・フライス加工・測定・マーキングを1工程に集約する。更に、当社独自の技術である「重量管理を伴う部品加工」で量産化や省人化、高精度化を実現する計画。』ー株式会社飯塚製作所様
③新設備で自動化を実現!高精度短納期生産体制を確立し新市場へ
『CNC自動旋盤への戦略的投資で、部品両端の溝加工の位置精度及び芯ずれ穴加工の位置精度を±0.01㎜へと向上、手作業による部品反転作業と段取り替え作業を不要とする「短納期生産体制」の構築、により新商品の受注獲得を目指す計画。』ー株式会社チタカ様
④EV用モーター部品の加工事業開始に伴い高性能CNC旋盤を導入し量産体制を確立する
『当社は、NC旋盤やマシニングセンタ等の機械加工により金属部品を製造する会社です。既存の事業だけでは将来が見通せない状況から脱却を目指し、ディーゼル・ガソリン車用(トラック)エンジン部品からEV用モーター関連部品の製造へ転換します。』ー株式会社富士工機製作所様
⑤半導体製造装置分野へ進出するための製造・検査の好循環製造ラインの構築
『コロナをきっかけに当社の既存事業の成長は困難となっている。そこで当社のCNC棒材製造ノウハウを生かして新たにCNC自動旋盤と三次元測定機を導入し高度技術を要する半導体製造装置部品分野への新市場進出を行う。』ーホンダスチール株式会社様
ものづくり補助金
旋盤加工機(NC旋盤・CNC旋盤)の導入には『ものづくり補助金』が活用できます。その特徴について詳しくご紹介しましょう。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金の目的は、中小企業や小規模事業者が直面するこれらの変化に効果的に対応し、長期的な視点で競争力を維持するための支援を提供することにあります。具体的には、新しい製品やサービスの開発、生産プロセスの改善による省力化など、生産性を向上させるための設備投資を支援します。
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この補助金を活用することで、企業は制度変更の影響を最小限に抑えつつ、生産効率の向上やコスト削減を実現することが可能になります。
例えば、最新の技術を取り入れた機械設備の導入により、製造プロセスの自動化を進め、手作業に頼っていた部分を減らすことができます。これにより、労働時間の削減や作業の精度向上が期待でき、結果的に製品の品質向上や生産コストの削減につながります。また、革新的なアイデアを実現するためのリスクを軽減し、中小企業や小規模事業者が新たなビジネスチャンスを探求する機会となります。ものづくり補助金には以下の3種類の申請枠・類型があり、それぞれによって、補助率や補助金額は異なります。
- 省力化(オーダーメイド)枠
- 製品・サービス高付加価値化枠
- グローバル枠
事業類型 | 補助率 | 補助金額 |
省力化(オーダーメイド)枠 | ■中小企業 補助金額1,500万円まで:1/2 補助金額1,500万円を超える部分:1/3 ■小規模企業者・小規模事業者 補助金額1,500万円まで:2/3 補助金額1,500万円を超える部分:1/3 | ■従業員数 5人以下 :100万円~750万円 6~20人 :100万円~1,500万円 21~50人 :100万円~3,000万円 51~99人 :100万円~5,000万円 100人以上:100万円~8,000万円 |
製品・サービス高付加価値化枠 | ■通常類型 中小企業:1/2 小規模企業者・小規模事業者:2/3 新型コロナ回復加速化特例 :2/3 ■成長分野進出類型(DX・GX) 中小企業:2/3 小規模企業者・小規模事業者:2/3 | ■通常類型 従業員数 5人以下:100万円~750万円 6~20人:100万円~1,000万円 21人以上:100万円~1,250万円 ■成長分野進出類型(DX・GX) 従業員数 5人以下:100万円~1,000万円 6~20人:100万円~1,500万円 21人以上:100万円~2,500万円 |
グローバル枠 | 中小企業:1/2 小規模企業者・小規模事業者:2/3 | 100万円~3,000万円 |
ものづくり補助金の採択率・採択事例
ものづくり補助金の採択率は次のように推移しています。
公募回 | 採択率 |
12次 | 58.6% |
13次 | 58.0% |
14次 | 50.7% |
15次 | 50.2% |
16次 | 48.8% |
48%から58%の間で推移しており、比較的高い成功率を示していることが分かります。
旋盤(NC旋盤・CNC旋盤)の導入にかかる採択事例には次のものがあります。
①特注仕様NC複合旋盤導入により生産プロセスを改善し、新規分野からの受注拡大を図る。
②CNC複合旋盤設備の導入による、半導体生産設備部品対応の生産能力の強化事業を実現する。
③独自仕様CNC旋盤導入による金属深絞り製品の端面加工能力増強を行う。
④最新型のNC自動旋盤導入による生産性の向上を図る。
⑤主軸台移動形CNC自動旋盤導入による高効率切削加工システムの構築を図る。
小規模事業者持続化補助金
旋盤(NC旋盤・CNC旋盤)の導入には『小規模事業者持続化補助金』が活用できます。その特徴について詳しくご紹介しましょう。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者や一定要件を満たす特定非営利活動法人(NPOなど)も、働き方改革、被用者保険の適用範囲の拡大、賃上げ、インボイス制度導入などの制度変更に対応する必要があります。小規模事業者持続化補助金は、これらの企業や組織が直面する課題に対処し、持続的な成長を遂げるための販路開拓や業務効率化の取り組みを支援します。この補助金の狙いは、地域の雇用や産業を支える小規模事業者の生産性を高め、彼らが直面する挑戦に対して具体的な支援を提供することです。
新しい市場への参入、販売方法の工夫、商品の改良や開発など、持続可能な経営を目指す上で必要な経営計画に基づく取り組みに対して、経費の一部をカバーします。
小規模事業者持続化補助金には以下の5種類の申請枠・類型があり、それぞれによって、補助率や補助金額は異なります。
- 通常枠
- 賃金引上げ枠
- 卒業枠
- 後継者支援枠
- 創業枠
事業類型 | 補助率 | 補助金額 |
通常枠 | 2/3 | 50万円 |
賃金引上げ枠 | 2/3(赤字事業者は3/4) | 200万円 |
卒業枠 | 2/3 | 200万円 |
後継者支援枠 | 2/3 | 200万円 |
創業枠 | 2/3 | 200万円 |
小規模事業者持続化補助金の採択率・採択事例
過去3回の公募での採択率は以下の通りに推移しています。
締切回・受付締切日 | 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
11回(令和5年5月25日) | 11,030 | 6,498 | 58.9% |
12回(令和5年8月31日) | 13,373 | 7,438 | 55.6% |
13回(令和5年9月7日) | 15,308 | 8,729 | 57.0% |
採択率は55%〜59%程度になっており、比較的高いことが分かります。
旋盤(NC旋盤・CNC旋盤)の導入にかかる採択事例には次のものがあります。
①長尺旋盤加工のマニュアル化(標準化)
②旋盤(木工ろくろ)による加工を施した製品の製作
③CNC普通旋盤導入による特許出願製品の商品化と販路開拓
④新型旋盤の導入による新規取引先の開拓と切削加工の生産性向上
⑤自動旋盤の加工速度アップによる生産性向上の取組み
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中小企業省力化投資補助事業
旋盤(NC旋盤・CNC旋盤)の導入には『中小企業省力化投資補助事業(省人化・省力化補助金)』が活用できます。その特徴について詳しくご紹介しましょう。
中小企業省力化投資補助事業とは
日本の中小企業は、深刻な人手不足に直面しています。この問題に対処し、企業の売上拡大や生産性向上を後押しするため、『中小企業省力化投資補助事業』が設けられてます。中小企業省力化投資補助事業は、IoT、ロボットなどの汎用的な製品を導入し、人手不足を解消するための経費の一部を支援します。これにより、中小企業は即効性のある省力化投資を行うことが可能となり、結果として付加価値額の増加や生産性の向上、賃上げが期待できます。このように、中小企業省力化投資補助事業は、現在の人手不足の課題に対応し、企業の競争力を高めるための重要なサポートを提供します。
令和5年度の補正予算において、「カタログ型」という新しい申請類型が発表されました。
事業者が「カタログ」から、自社の課題解決に繋がる製品を選択し、その導入に必要な費用の一部を補助金として申請できる仕組みです。
事業類型 | 補助率 | 補助金額 |
省力化投資補助枠(カタログ型) | 1/2 | ■従業員数 5人以下:200万円(300万円) 6~20人:500万円(750万円) 21人以上:1000万円(1500万円) ※()内は賃上要件を達成した場合 |
中小企業省力化投資補助事業の採択率・採択事例
令和5年度の補正予算においては、1000億円が用意されていました。
採択率は公表されていませんが、経済産業省の補助金については高めであると言われることがあります。中小企業省力化投資補助制度は、中小企業やそれに類する事業体が直面する人手不足問題に対処するために設計された支援プログラムです。この制度の目的は、売上の拡大や生産性の向上を実現するために、中小企業が容易に取り組むことができる省力化投資を奨励することにあります。
制度の特徴の一つは、「カタログ」を用いた製品の選択システムです。このカタログには、IoTデバイスやロボットなど、人手不足の問題を解決するのに効果的な汎用製品が掲載されています。
中小企業はこのカタログから必要な製品を選び、その導入を支援する補助金を申請することができます。このようにして、中小企業省力化投資補助制度は、中小企業が人手不足に対応し、その結果として売上拡大や生産性の向上を目指すための、簡易かつ即効性のある手段を提供します。
カタログを通じた製品選択は、事業者が自らのニーズに最適な解決策を見つける手助けとなり、実際の導入までのプロセスを大きく簡略化できます。この制度は、中小企業の経営環境を改善し、より持続可能な成長を支援するための重要な取り組みの一つであると言えるでしょう。
まとめ
本記事では、製造業における旋盤(NC旋盤・CNC旋盤)の導入を支援するための補助金4選について詳しく解説しました。これらの補助金は、技術の革新や生産効率の向上、働き方改革など、多様な事業改善を目指す中小企業や小規模事業者に対して、経済的なサポートを提供します。
旋盤加工機の導入を考える企業は、それぞれ異なる申請条件や支援内容を有していますので、自社のニーズや事業計画に最も合致する補助金プログラムを選択し、申請過程においてその要件を満たすことが重要です。適切な補助金を活用することで、旋盤の導入に伴う初期投資を軽減し、事業の競争力を強化することが可能になります。
今回紹介した補助金プログラムは、中小企業や小規模事業者が直面する課題に対処し、持続可能な成長を達成するための強力な支援を提供するものです。
旋盤加工機の導入を検討している事業者は、これらの補助金を積極的に活用し、事業の革新と成長を目指しましょう。