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製造業を営んでいる方やこれから製造業を始めたい方にとって、多額の設備投資や運転資金の捻出は頭を悩ませる要因ですよね。また製造業は、社会情勢による原材料費や人件費の高騰、海外との価格競争など、コスト面で大きなリスクを伴う業種とも言えます。そのため、自己資金や金融機関からの融資などで資金を工面する方が多いでしょうが、特に製造業の方に活用して頂きたいのが「補助金」です。
この記事では、製造業を営んでいる方で
「補助金を利用し生産性をあげたい!」
「補助金を活用し、自社の利益率や業務改善をしたい!」
と考えている方におすすめの補助金をまとめていきます。
2024年最新の製造業におすすめの補助金や、補助金を受け取る際の注意点なども解説しているので、最後までぜひチェックしてみてください。
2024年度|製造業におすすめの補助金
製造業におすすめの補助金は以下の12種類です。
- ものづくり補助金 第17次
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
- 特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)
- 海外知財訴訟費用保険に対する補助
- 国際出願促進交付金
- 中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金
- 障害者福祉施設設置等助成金
- 産業雇用安定助成金
- キャリアアップ助成金
貰える金額や採択率、対象の事業者などがそれぞれ違うので、以下で詳しく解説します。
ものづくり補助金 第17次
ものづくり補助金とは、生産性を高める目的で行うサービス開発や試作品の制作、業務改善のための設備投資を援助する補助金です。
貰える金額 | 数百万円から数千万円の範囲で支給されるケースが多い※補助率は一般的に補助対象経費の2/3程度 |
採択率 | 10%〜30%程度 |
対象事業者 | 製造業を営む中小企業や小規模事業者 |
通年公募されているものづくり補助金ですが、17次の公募は「省力化(オーダーメイド枠)」のみが対象です。省力化とは、人手不足の解消に向けて専用設備を導入し生産工程の省力化を支援する枠組みを指します。概要は以下の通りです。
省力化(オーダーメイド枠) | デジタル技術等を活用した専用設備の導入により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化や高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援 |
ものづくり補助金について、事例付きで詳しくまとめた記事を公開しました。
こちらも併せてご覧くださいませ。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新市場の開拓や業態変更をメインとした主に中小企業を支援する補助金です。事業成長や再編のために使用される補助金の1つとなります。
貰える金額 | 数百万円から1億円程度 |
採択率 | 20%前後 |
対象事業者 | 中小企業や個人事業主で、新たなビジネスモデルへの転換や新規事業の創出を計画している場合が対象 |
補助対象の経費は、建物費(建物の建築・改修)、設備費、システム購入費、クラウドサービス費、専門家経費など多岐に渡り、初期費用を抑えて新事業に挑戦できるメリットがあります。また、他の補助金に比べて貰える金額が大きく、補助金は最大8,000万円(企業により1億円)とかなり高額です。
特に設備投資に着目し、活用できる補助金を7つまとめた記事もぜひ参考にしてみてください。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、持続的な経営に向けた経営計画に基づく小規模事業者の地道な販路開拓や事業効率化等の取り組みを支援する補助金です。
貰える金額 | 数十万円から数百万円程度 |
採択率 | 55%前後 |
対象事業者 | 常時使用する従業員が20人以下の製造業その他に該当する法人・個人事業・特定非営利活動法人が対象 |
申請類型は5枠あり、通常枠、特別枠(賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠)のいずれか1つのみ申請が可能です。また補助対象の経費は、販路開拓や補助事業の遂行に必要な機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費などで、採択率が比較的高いのも特徴です。
IT導入補助金
IT導入補助金は、事業のデジタル化による業務改善支援を目的としたソフトウェアやシステム導入を経済的に支援する補助金です。
貰える金額 | 数十万円から数百万円程度補助対象経費の1/2から2/3程度 |
採択率 | 25%〜50% |
対象事業者 | 新しいITツールを導入して業務効率化やサービスの質を向上させようと考えている企業 |
対象のITツールは、パッケージソフトの本体費用、クラウドサービスの導入・初期費用、ITコンサルティング費用・改修費用などです。特に、複数の業務工程を広範囲に非対面化し、業務形態を大きく転換できるITツールの導入を支援しています。
2024年度は、通常枠に加えてセキュリティ対策推進枠、インボイス枠、複数社連携IT導入枠の全4枠に改編され、補助率の拡大なども行われています。
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金とは、電気自動車や燃料電池車などの購入を経済的に支援する補助金の1つで、CEV補助金とも言われています。
貰える金額 | 数十万円から数百万円程度 |
採択率 | 公開されているデータが少ない |
対象事業者 | クリーンエネルギー自動車の導入を計画している企業や団体 |
脱炭素社会の実現と環境保全に重要な役割を担うクリーンエネルギー自動車ですが、どうしてもコストが高いのが難点です。そのため政府は、電気自動車は上限80万円・燃料電池自動車は上限250万円などの補助金を設定し、普及促進に尽力しています。
また、補助金を受け取るための条件として、車両や設備の活動状況をモニタリングし調査報告することや、災害時や地域防災への貢献や協力なども求められます。
特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)
特定求職者雇用開発助成金とは、就職が難しい人を雇う企業へ、採用費用を補助する助成金制度です。
貰える金額 | 数十万円から百万円程度(雇用条件により異なる) |
採択率 | – |
対象事業者 | 生活保護受給者等を雇用する企業が対象 |
厚生労働省が定めた補助金で、高年齢者や障害者、母子家庭の母等の就職困難者をハローワークや民間の職業紹介事業者の紹介により継続して雇用する場合に助成されます。また、労働時間や年齢、障害の程度などによって助成額や助成対象期間が異なり、助成金は複数回に分けて支給されます。
海外知財訴訟費用保険に対する補助
海外知財訴訟費用保健に対する補助とは、海外での知財訴訟にかかる費用の一部を負担してくれる補助金です。
貰える金額 | 訴訟の規模や内容により異なる |
採択率 | 応募条件を満たす企業への支援意向が強いため、適格な申請は比較的高い採択率を見込める |
対象事業者 | 海外で知的財産権を保護しようとする中小企業や製造業者 |
日本商工会議所などが運営しており、補助率は海外知財訴訟費用保険加入時の掛金1/2(2年目以降の更新の場合は1/3)です。
日本企業の海外事情拡大や増加に伴い、海外での知的財産侵害を理由とする係争も増加傾向にあります。特に、中小企業は係争で事業撤退や会社存続の危機に陥るリスクが高く、それらの対応に要する多額の費用を補填する目的として運営されています。
国際出願促進交付金
国際出願促進交付金は、資金や人材不足で知的財産活動が十分できない者を支援する制度で、国際特許出願の手続きにおける手数料の1部が補助されます。
貰える金額 | 国際出願に必要な費用の一部をカバー。出願件数やプロジェクトの内容に応じて異なる |
採択率 | – |
対象事業者 | 国際特許出願を計画する中小企業や製造業者 |
中小企業が特許の国際出願を促進することを目的としており、交付対象は国際出願時の「国際出願手数料」、予備審査請求時の「取扱手数料」です。他に「送付手数料」や
「調査手数料」、「予備審査手数料」は軽減措置の対象となります。
納付金額の2/3に相当する額が交付され、さらに適用率が高い減免制度を利用することでさらに負担額を抑えることができます。
中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金
この補助金は海外で権利侵害にあった中小企業を支援する補助金です。
侵害調査や警告文作成、行政摘発、税関差止申請、模倣品のウェブページ削除などの費用の一部を助成する補助金となります。
貰える金額 | 数十万円から数百万円 |
採択率 | – |
対象事業者 | 海外市場での事業展開を目指す中小製造業者 |
日本企業の海外進出における促進や、海外で取得した特許・商標等の侵害を受けている資金力の乏しい中小企業を支援する目的があります。また、補助率は経費の2/3で、上限額は400万円と定められています。
障害者福祉施設設置等助成金
障害者を継続して雇用する中小企業に福祉施設の設置・整備費用を助成する制度です。
貰える金額 | 施設設置や改修に必要な費用の一部※数百万円の支援が見込まれるケース |
採択率 | 社会貢献度やプロジェクトの必要性が高い場合に支援される可能性が高い |
対象事業者 | 障害者の雇用や福祉に貢献する施設を設置・運営する製造業 |
支給対象となる福祉施設は、保健施設(保健室、洗面所、休憩室)や給食室(食堂)、それらに附帯し障害者の利用を容易にするために配慮された玄関や廊下、トイレ等が該当します。
過去に同じ助成金を受け取った場合は、同一障害をもって助成金の申請はできないので注意しましょう。
産業雇用安定助成金
新型コロナウイルスによって事業が縮小した中小企業が対象となる、事業構築や事業転換のための新たな人材の受け入れを支援する助成金です。
貰える金額 | 具体的な金額は計画内容に基づく |
採択率 | 労働環境の質の向上を目指す事業所に対し、積極的に支援 |
対象事業者 | 雇用条件の改善や人材育成を進める製造業を含む中小企業 |
産業雇用安定助成金を受け取るには、売上高・生産量が一定以上減少していることや、雇用調整のための従業員の出向先・期間が明確であること等を証明する必要があります。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、従業員のキャリアアップ、キャリア形成支援に関わる経費の一部を負担してくれる助成金です。
貰える金額 | 支援額は計画の規模に依存 |
採択率 | 質の高い人材育成計画に対しては比較的高い支援 |
対象事業者 | 従業員のキャリアアップを支援する取り組みを行う中小製造業 |
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を企業内でキャリアアップさせるのが目的のため、正規雇用や無期雇用を条件に雇用した労働者の支援は対象外です。また、非正規雇用者でも、雇用されている期間が通算6ヶ月以上、または同一の業務について6ヶ月以上継続していることが条件となります。
製造業におすすめの借入制度
新事業の設備投資や売上・規模拡大に奔走する製造業にとって、資金確保に必要な借入制度は重要事項ですよね。借入制度をしっかり把握して、より自社に合った資金繰りを目指したいものです。
そこで以下では、製造業におすすめの借入制度を2つ解説します。
2024年度からスタートの新しい信用保証制度
経済産業省は2024年度から、保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする新たな信用保証制度を発表しました。
これまでは、中小企業・小規模事業者が金融機関から借入する際、資金調達しやすくなるメリットから多くが信用保制度を利用し経営者保証を担保していました。経営者保証とは、経営者個人が会社の連帯保証人になり、万が一経営が行き詰まり返済が滞った際に経営者が代わり返済をするという旨の保証です。
経営者保証は、企業の信用を高めて資金調達をスムーズにする目的がある一方で、事業継承を躊躇わせている要因となっていました。
そこで政府は、通常の保証料金に保証料を上乗せして経営者保証の提供を不要にする新たな制度を、2024年3月15日からスタートさせる方針を示しています。
日本政策金融公庫等による資金繰り支援
日本政策金融公庫の資金繰り支援に関して、中小企業・小規模事業者向けに以下のような項目があります。
借入制度 | 対象事業者 |
経営環境変化対応資金 | 社会的・経済的環境の変化により、売上や利益が減少して業績が悪化している企業 |
金融環境変化対応資金 | 金融機関との取引状況の変化(金融機関からの借入残高の減少等)により、資金繰りが困難な企業 |
取引企業倒産対応資金 | 関連企業の倒産に伴い経営が悪化している企業 |
東日本大震災復興特別貸付 | 東日本大震災により甚大な被害を受けた企業 |
様々な要因に対しての支援が行われているので、もし業績悪化に伴い資金繰り支援が必要な場合は、状況を冷静に分析し要因に合った借入制度を申請しましょう。
補助金申請における注意点
製造業を営んでいる方が補助金申請する際に注意すべき点は以下の4つです。
- 申請に時間がかかる
- 補助金は後払い
- 補助金返還のリスクがある
- 事業計画書に機械の図や画像を入れて、わかりやすい事業計画書を作る
項目ごとに、以下でそれぞれ解説します。
申請に時間がかかる
まずは申請に時間がかかる点です。
一般的に、補助金申請には3ヶ月から6ヶ月ほどかかるケースが多いです。
そのためすぐに補助金がおりるわけではないため事前に数値計画をたて3ヶ月から6ヶ月ほどの結果通知を想定しておくことが大切です。
補助金は後払い
製造業の補助金申請で注意すべき点は補助金が後払いである点です。
基本的に補助金はプロジェクトに必要な出費を後から補填してくれる支援策になるため初期費用は自己資金や他の調達でカバーする必要があります。
こちらも事前に資金計画をたてスケジュールを調整することが大切です。
補助金返還のリスクがある
製造業の補助金申請においては、補助金返還のリスクにも注意が必要です。
補助金が着金するまでのプロセスにて、プロジェクトが上手くいかない場合や報告義務を怠ることで補助金が返還されるリスクがあります。
申請時には補助金の使用条件や報告要件を正確に理解し、プロジェクト管理を徹底することが重要です。
事業計画書に機械の図や画像を入れて、わかりやすい事業計画書を作る
事業計画書を作成する際には、機械の図や画像を取り入れることで計画の理解を深め、よりわかりやすい内容にすることが重要ポイントです。
特に製造業では、機械の製造や機能を図などを入れて資料を作ることで伝わりやすい説明が可能です。
プロジェクトにおいてもわかりやすく説明することで価値を効果的に伝えることができるため、補助金申請がスムーズに進む可能性が高くなります。
よくある質問
ものづくり補助金に関してよくある質問を以下で解説します。ものづくり補助金への理解をより深めたい方は、ぜひチェックしてみて下さい。
ものづくり補助金は年に何回ありますか?
ものづくり補助金は、年間を通して4回の期間に分けて公募されます。そのため、事業者は都合の良いタイミングで申請可能で、スケジュール調整がしやすいメリットがあります。
ただし、申請は年に1回までとされており、一度採択されて交付決定を受けた事業者は年度内に再申請することができません。また、過去3年間に2回以上補助金の交付決定を受けている場合、補助の対象外になるので注意しましょう。
ものづくり補助金は従業員がいない場合も申請できますか?
ものづくり補助金は、従業員がいない場合も申請が可能です。
補助金の要件として、従業員数または資本金のいずれかが一定数以下であることや、従業員に対する賃金の引上げを宣言していることなどが挙げられます。そのため、個人事業主として従業員を持たず申請した場合、今後従業員を雇い入れた際の賃金引上げを行う旨を明記した「賃金引上げ計画の誓約書」の提出が必要となります。
ものづくり補助金はいくらもらえますか?
ものづくり補助金は、従業員規模に応じた補助上限額が申請予定の枠毎に設定されています。
例えば、最もスタンダードとされる「通常枠」は以下の通りです。
5人以下 | 100〜750万円 |
6〜20人 | 100万〜1,000万円 |
21人以上 | 100万〜1,250万円 |
また、上記で挙げた「省力化枠」は上限額がグッと上がります。
5人以下 | 100〜750万円 |
6〜20人 | 100万〜1,500万円 |
21〜50人 | 100万〜3,000万円 |
51人〜99人 | 100万〜5,000万円 |
100人以上 | 100万〜8,000万円 |
まとめ
製造業は他の業種と比較し、システムや機械導入費用など金額が高いものが多いです。
そのため補助金申請における注意点をおさえておかなければ資金計画に影響が出てきてしまいます。
補助金の申請タイミングや事業計画をすり合わせながら必要なタイミングで補助金申請を検討してみることが大切です。
当記事が補助金選びの一助となれば幸いです。